電気工事の竣工検査・自主検査の 中心となる測定 が、絶縁抵抗計(通称メガー)による絶縁抵抗測定です。電気設備技術基準(省令)第58条と、その解釈である電技解釈第14条で具体的な数値基準が定められています。測定そのものは電気工事士法の「電気工事」(電気工作物を設置・変更する工事)ではありませんが、測定のために固定配線を端子から外す・接続し直す作業は電気工事の作業に該当し得るため、その部分は電気工事士が行う必要があります。
メガーは竣工検査の定番測定器ですが、筆者の周りでは「どこを当てればいいのか分からない」「数値の判定基準が曖昧」という声をよく聞く工具でもあります。
この記事では、メガーの基本から判定基準(電技省令第58条/電技解釈第14条)、5ステップの測定手順までを、法令原文にあたってまとめました。
絶縁抵抗計(メガー)とは何か
メガーは、電線と大地(アース)の間にどれだけ電気が漏れているかを測る測定器です。電線の被覆が劣化したりネジ止め部分で地絡(ちらく)していると抵抗値が下がり、漏電や感電の原因になります。
テスターや検電器とは目的が異なります。
- テスター:電圧・電流・抵抗を測る汎用計器(低い電圧で抵抗を測る)
- 検電器:活線(電気が来ているか)を確認するだけの安全工具
- メガー:DC高電圧(250V/500V/1000V等)を印加して 絶縁の健全性 を測る専用機
普通のテスターは低い電圧で抵抗を測る計器で、規定の試験電圧(DC 500V など)をかけた状態の絶縁性能は評価できません。メガーは内部で高電圧を発生させるため、専用機が必要になります。
単位は MΩ(メガオーム) で、数値が大きいほど絶縁状態が良好です。
電技省令第58条/電技解釈第14条 の判定基準
絶縁抵抗値(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)の数値基準は 電気設備技術基準(省令)第58条 に明記されており、その解釈と、絶縁抵抗測定が困難な場合の代替基準(漏えい電流1mA以下)は 電技解釈第14条 に定められています。なお第14条は絶縁性能の基準を示す条文で、メガーの端子接続や試験電圧の選び方といった測定手順そのものを定めた条文ではありません(手順はJISや計器メーカーの資料に従います)。これが本記事の核です。電技解釈は経済産業省が公表しており、改正が随時行われるため、最新版は経済産業省「電気事業法 告示・内規等」ページに掲載の「電気設備の技術基準の解釈」PDFで確認してください。
判定基準は「使用電圧」と「対地電圧」の組み合わせで決まります。
| 使用電圧の区分 | 対地電圧 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|---|
| 300V以下 | 150V以下 | 0.1MΩ以上 |
| 300V以下 | 150V超 | 0.2MΩ以上 |
| 300V超 | — | 0.4MΩ以上 |
| 電路の使用電圧 | 絶縁抵抗値 | 判定 |
|---|---|---|
| 使用電圧300V以下(対地電圧150V以下) | 0.1MΩ以上 | 合格 |
| 使用電圧300V以下(対地電圧150V超) | 0.2MΩ以上 | 合格 |
| 使用電圧300V超 | 0.4MΩ以上 | 合格 |
| 基準を下回るが極端に低くはない | 基準値未満 | 不合格・要原因調査 |
| 著しく低い(筆者の目安) | 基準値を大きく下回る | 不合格・絶縁劣化や地絡などの原因調査 |
※電気設備技術基準(省令)第58条/電技解釈第14条に基づく判定基準。中段・下段の区分は筆者の実務上の目安で、法令上は基準値以上か未満かのみが合否判定です
一般家庭の単相100V回路(対地電圧100V)は1段目(0.1MΩ以上)、単相200Vのエアコン専用回路(200V中性線接地式は対地電圧100Vのため1段目)、三相200V動力回路(変圧器低圧側の1線をB種接地する方式では非接地相の対地電圧が200Vとなり2段目=0.2MΩ以上)など、回路ごとに対地電圧を確認して判定してください。
測定回路の概念図
メガーは「電線(L または N)と大地(アース)の間」に高電圧をかけて、その間に流れるごく微小な電流から絶縁抵抗値を計算します。

分電盤での測定箇所
竣工検査では、分電盤を中心に「主幹二次側 → 漏電ブレーカー二次側 → 各分岐回路 → 末端コンセント」の順で測定箇所をチェックしていきます。下図は一般家庭の分電盤を俯瞰した模式図と、メガーを当てる代表的な測定ポイントを示したものです。
実務では主幹を切り、測定する回路を停電・検電で無電圧確認したうえで、子ブレーカー単位に切り分けて回路ごとに測定します(測定中の回路に電源を入れてはいけません)。盤内が古い物件では端子部の汚損・湿気・被覆の損傷が絶縁低下の原因になることがあるため、数値が悪い回路は端子部の点検も合わせて行ってください。
使い方の手順(5ステップ)
ここからが本題の測定手順です。安全と測定精度の両面から、順番を守って進めてください。特に①の電源遮断と検電は省略しないでください。
①電源遮断(ブレーカーOFF・検電確認)
測定対象の回路のブレーカーを切ります。主幹ブレーカーから切るのが安全です。ブレーカーを切ったら、検電器で 無電圧であることを確認 してください。
「落としたつもり」が事故の典型パターンです。検電器でゼロ確認するまで触らない、これを徹底します。
②負荷の切り離し・コンデンサ放電
電子機器(テレビ・パソコン・LED照明・インバーター搭載家電)が繋がったまま測定すると、内部回路に高電圧がかかって機器が壊れる可能性があります。
- コンセント側: プラグを全て抜く
- 照明回路: 電球・LED灯具を外す、または照明スイッチをOFF
- 機器組込み: 分岐ブレーカー二次側で切り離す
加えて、進相コンデンサ・インバーター機器を含む回路では、テスター(電圧計)で残留電荷がないことを確認し、必要なら機器メーカー指定の方法で放電させてから次の手順に進みます。これを怠ると、依頼先の機器を破損させる原因になります。
③測定電圧(レンジ)を選ぶ
メガーには複数の測定電圧(DC 50V / 125V / 250V / 500V / 1000V など機種により異なる)があります。JIS C 1302 の解説に示された使用例(共立電気計器「絶縁抵抗計ガイドブック」に転載)は以下のとおりです。
| 対象回路 | 測定電圧 |
|---|---|
| 電話回線用機器・電路 | DC 25V/50V |
| 100V系低圧配電路・機器の維持管理、制御機器 | DC 100V/125V |
| 200V系低圧電路・機器の維持管理 | DC 250V |
| 600V以下の低圧配電路の竣工検査・維持管理 | DC 500V |
| 600Vを超える回路・機器、高圧設備 | DC 1000V以上 |
600V以下の低圧配電路の竣工検査はDC 500V が JIS の使用例です。維持管理で機器をつないだまま測る場合は 100V系で125V、200V系で250Vという低い電圧が挙げられており、半導体を含む機器を痛めないための配慮でもあります。高圧設備の測定は本記事の対象外です。
④電線と接地(アース・大地)間で測定
電線‐大地間を測るときは、L端子(ライン)を測定対象の電線に、E端子(アース)を接地極や接地線に接続します。電線相互間を測るときは、L端子とE端子をそれぞれの電線に接続します。電技省令第58条は「電線相互間」と「電路と大地との間」の両方について絶縁性能を定めているため、回路構成に応じて両方を測定します。MEASUREボタン(または PRESS TO TEST)を押し続けて指針が安定したら数値を読みます。
針(表示)が安定するまで待ちます。絶縁体の充電電流の影響で正常な対象でも読みが動くことがありますが、いつまでも下がり続けるときは湿気や結線部の問題も疑ってください。
⑤判定基準に照らして合否・記録
読み取った数値を電技省令第58条/電技解釈第14条の表と突き合わせ、回路ごとに数値を検査記録に残します。
- 単相100V回路(対地電圧100V)で 0.1MΩ以上 → 合格
- 単相200V中性線接地式(対地電圧100V)で 0.1MΩ以上 → 合格
- 三相200V動力回路など対地電圧が150Vを超える回路で 0.2MΩ以上 → 合格
- 数値が基準を下回る → 不合格、原因調査へ
実務では基準を満たしていても劣化兆候(同系統で他回路と比べて極端に低いなど)が見える場合があるため、数値の傾向もあわせて記録すると後の保守点検で役立ちます。
安全注意事項のフローチャート
測定後は測定対象に電荷が残ることがあります。本記事で挙げる IR4051・KEW3161A・PDM5219S はいずれも自動放電機能があるので、リードをつないだまま測定を止め、取扱説明書の手順で放電完了を確認してからリードを外して ください。これを忘れると、不意に触れて感電する事故に繋がります。
代表機種(プロ・コスパ・汎用の3択)
メガーは価格帯に幅がありますが、安全に直結する測定器なので 信頼性のあるメーカー品 を選んでください。
日置電機 IR4051シリーズ(プロの定番)
国内大手の日置(HIOKI)製。IR4051は5レンジ切替(50V/125V/250V/500V/1000V)で低圧の用途を1台でカバーできます。公式仕様ではコンパレータ判定の応答時間約0.8秒、コンクリート上1mからの落下に耐える設計、自動放電機能があります。竣工検査メインの方に向いています。
共立電気計器 KEW3161A(コスパ良好)
KYORITSU(共立電気計器)の低圧用絶縁抵抗計の現行ラインから、KEW3161A(15V/500Vの2レンジアナログ、税込¥35,200)などが定番です。「一般低圧用に1台」という用途に向いた構成です。第二種電気工事士の方が初めて買うメガーとしてもおすすめです。型番はモデルチェンジで変わることがあるので、購入時に共立電気計器の公式サイトで現行モデルを確認してください。
三和電気計器 PDM5219S 等(汎用)
テスターで有名なSANWA(三和電気計器)も絶縁抵抗計をラインナップしています。低圧用アナログ絶縁抵抗計の PDM5219S(125V/250V/500Vの3レンジ。旧モデル DM5218S の後継機で、最大目盛を100MΩに改めて0.1MΩ・0.2MΩ付近が読みやすくなっています)が代表モデルです。テスター・クランプメーターと同じメーカーで揃えたい方や、汎用的に使いたい方に向いています。型番は改廃があるため、購入時に三和電気計器の公式サイトで現行品を確認してください。
測定記録の手間を減らしたい方には、測定値をスマートフォンに転送できるモデルもあります。下の KEW 3441BT はアナログ表示(指針式)にBluetooth通信を組み合わせた機種で、デジタル表示機ではありません。竣工検査の記録作業がそのまま省力化できるため、点検件数が多い方ほど効果を実感しやすい一台です。
アナログ絶縁抵抗計 KEW 3441BT(Bluetooth搭載)
Bluetooth通信機能を搭載したアナログ絶縁抵抗計(メーカー公式「アナログメガ」)。測定値をスマホアプリに送信でき、125V〜1000Vの4レンジ対応で住宅から低圧設備までの竣工検査・年次点検に対応。
- 4レンジ対応(125V/250V/500V/1000V)
- Bluetooth 5.0 搭載(KEW Smart Advanced 対応)
- 測定後の自動放電機能・絶縁状態LED判別
- 電圧計機能(AC/DC 0〜600V)/約440g
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
使用時の注意(活線NG・コンデンサ放電)
なお、絶縁手袋を併用する場面もありますが、絶縁手袋の規格は JIS T 8112:2014(電気絶縁用手袋) であり、メガー本体側のJIS C 1302(絶縁抵抗計)とは別物です。混同しないでください。さらに低圧(交流1,000V・直流1,500V以下)の活線近接作業で絶縁工具を使う場合は、 IEC 60900 適合の活線作業用絶縁工具を選定してください(高圧6.6kV設備は IEC 60900 の適用範囲外です)。
DIY範囲との関連|メガー測定は電気工事士の業務
ここは非常に重要な部分です。
メガー測定は単なる「機器の使い方」ではなく、電気工事の竣工検査・点検という業務の一部 です。電気工事士法第2条第3項の「電気工事」は電気工作物を設置し、又は変更する工事を指すため、測定器のリードを当てる行為そのものは電気工事ではありません。ただし、測定のために固定配線を端子から外す・接続し直す作業は電気工事の作業に該当し得るため、その部分は電気工事士法第3条により有資格者が行う必要があります。
「軽微な工事」(電気工事士法施行令第1条)にはコンセント増設のような配線工事は含まれず、その工事の一環として配線を外して測定するなら有資格者の業務範囲です。法令の原文は電気工事士法(e-Gov法令検索)で確認できます。
無資格で電気工事を行った場合、電気工事士法第14条 により 3月以下の拘禁刑又は3万円以下の罰金 が科せられます(第3条第1項〜第3項違反。2025年6月の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に一本化/罰則の具体的な金額・刑期は法改正で変わる可能性があるため、最新の条文を必ず確認してください)。
コンセント増設の境界線についてはコンセント増設のDIY境界線で詳しく解説しています。
どんな人がメガーを揃えるべきか(電工士 / 試験対策層 / DIY層)
「自分はメガーを買うべきか、それとも借りればいいのか」を判断する目安です。
メガー購入が向いている人
- 電気工事士(第二種・第一種)として実務をこなしている方:竣工検査の中心となる工具
- 自社で年に複数回の自主検査を行う事業者
- 太陽光発電・蓄電池の保守点検業務に関わる方
- ビルメン・施設管理職で日常点検を担当する方
借用やレンタルで十分な人
- 学科試験対策中で、出題知識として理解できれば良い方(実機演習は職業訓練校等のカリキュラム内で十分)
- 資格取得直後でまだ独立工事をしていない方
- 点検の頻度が少ない小規模事業者
メガーを買ってはいけない人
- 無資格のDIY層:購入はできても、配線を外す作業を伴えば法令違反のリスク
- 「機器の点検を自分で済ませたい」だけの一般家庭ユーザー → 業者依頼が安全
機種選びに迷ったら、まずは共立 KEW3161A クラスの低圧用1台から始めるのが現実的です。
まとめ
メガーは竣工検査の合否を決める重要な測定器です。本記事のポイントを再掲します。
- 判定基準は 電技省令第58条/電技解釈第14条: 使用電圧300V以下・対地電圧150V以下=0.1MΩ以上 / 使用電圧300V以下・対地電圧150V超=0.2MΩ以上 / 使用電圧300V超=0.4MΩ以上
- 低圧配電路の竣工検査は DC 500V で測定(維持管理では100V系125V/200V系250Vの使用例あり)
- 手順は「①電源遮断+検電 → ②負荷切離し・放電 → ③レンジ選択 → ④L-E端子で測定 → ⑤判定・記録」
- 活線測定はNG、測定後はコンデンサ放電を行う
- 代表機種は日置 IR4051シリーズ / 共立 KEW3161A / 三和 PDM5219S 等から用途で選ぶ
- 測定のために配線を外す・接続し直す作業は電気工事の作業に該当し得る(無資格DIYは法令違反のリスク)
数値が基準ギリギリの回路を見つけたときに、原因を追えるかどうかがプロと素人の境目です。経験を積みながら、自分の手で「合格判定」を出せるようになってください。
腰道具に常備したい工具は電気工事士の腰道具の中身、ケーブル外装処理は電工ナイフのおすすめ5選、資格取得を目指す方は第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セット、独学派は第二種電気工事士 学科試験 完全対策、コンセント工事の法令境界はコンセント増設のDIY境界線、剥ぎ作業の基本はVVFケーブルの剥ぎ方 4つのテクニックもあわせてご覧ください。
よくある質問
- メガーとテスターの違いは何ですか?
- テスターは電圧・電流・抵抗を測る汎用計器で、規定の試験電圧をかけた状態の絶縁性能は評価できません。メガーは内部でDC高電圧(250V/500V/1000V等)を発生させて、電線と大地の間の絶縁性能を専用に測る測定器です。竣工検査ではテスターでは代用できません。なお停電が困難な場合は、電技解釈第14条の「漏えい電流1mA以下」による判定も認められています。
- 一般家庭の屋内配線は何Vレンジで測ればいいですか?
- 600V以下の低圧配電路の竣工検査はDC 500Vが JIS C 1302 解説の使用例です。機器をつないだままの維持管理では100V系で125V、200V系で250V、制御機器は100V/125V、電話回線は25V/50Vと、対象に応じて低い電圧を使い分けます。
- 判定値が基準ギリギリのとき、合格にしていいですか?
- 電技省令第58条/電技解釈第14条の数値を満たしていれば法令上は合格です。ただし基準ギリギリの値は劣化の兆候のことがある(筆者の経験上の目安)ため、原因(湿気・被覆劣化・結線不良など)の調査と改善を検討します。お客様には現状値と劣化リスクを正直に伝え、必要に応じて補修を提案してください。
- インバーターエアコンを繋いだまま測ったら壊れますか?
- 壊れるおそれがあります。インバーター搭載機器は内部にコンデンサと半導体が入っており、メガーのDC500Vが直接かかると素子が破損する可能性があります。必ず分岐ブレーカー二次側で切り離してから測定してください。コンセントタイプならプラグを抜くだけでOKです。
- メガーでDIYの電気工事をやってもいいですか?
- おすすめしません。測定そのものより、**測定のために配線を切り離したり端子へ接続したりする作業が「電気工事の作業」にあたる**ため、そこに資格が必要です(無資格での電気工事は電気工事士法第14条により3月以下の拘禁刑又は3万円以下の罰金)。また分電盤内は充電部が露出しており危険です。竣工検査・点検の手順は保安責任者・施工者の定めに従い、有資格者に依頼してください。