「インパクトドライバーを買おうと思うけど、マキタとHiKOKIとパナソニック、どれがいいの?」

電動工具を選ぶとき、よく候補に挙がるこの3社(筆者の見解)。ネットにはさまざまな意見がありますが、ここでは第一種電気工事士が、3社のカタログ公表値を同じ土俵に並べて比較します。

結論から先に言うと、「どれが一番」と一概に言える話ではなく、使う人の状況と優先事項によって正解が変わります。ただし、判断の軸と結論ははっきり示します。

前提:電気工事の現場でよく使う電動工具

電気工事士が現場で使う電動工具は主に以下のとおりです。

  • インパクトドライバー:コンセントや分電盤のビス締め、造営材へのビス留め
  • 電動ドリル・振動ドリル:コンクリートや木材への穴あけ(ケーブル貫通など)
  • コードレス丸ノコ:造営材のカット(大工作業との兼用)

今回は特にインパクトドライバーに絞って比較します。

配線器具の端子ねじなどは、器具メーカーが指定する工具・締付トルクに従ってください。インパクトドライバーの最大トルクが大きいことは、端子を適正なトルクで締められることを意味しません。

電動工具を腰道具に組み込むときの収納のコツは電気工事士の腰道具の中身を全部公開で解説しています。技能試験では電動工具は使えませんが、合格後に揃える参考として第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セットもどうぞ。これから筆記試験を控えている方は第二種電気工事士 筆記試験対策も参考になります。

マキタ(Makita)

特徴

ここでは18V LXTのTD173Dを比較します。40Vmaxなど、同じマキタでも別の電池規格があるため、メーカー名だけで互換性を判断しないでください。

屋内配線工事での位置づけ

マキタのインパクトドライバー(TD173Dシリーズ)は、打撃力と細かいトルク調整のバランスが取りやすい機種です。コンセントボックスのビス締めのような繊細な作業から、太いラグスクリューの締め付けまで幅広く対応できます。なお、上位機種の TD002G は40Vmax(36V)バッテリーを採用しており、18V LXTバッテリーとは互換性がない別系統の製品です。

18Vシリーズのバッテリーは互換性が高く、同じバッテリーでドリル・サンダー・ライトなど複数の工具を使い回せるのが大きな強みです。

職場で電池を共用する予定がある場合は、同僚が使う電池の品番と工具の対応を事前に照合します。全国のシェアから推測するより、実際の職場の構成で判断してください。

気になる点:18V LXTの電池は40Vmax機には使えません。本体だけ購入する場合は、対応電池・充電器の有無を確認してください。疲労感や他社全体との重さの優劣は、この3機種の仕様比較からは判定しません。

こんな人におすすめ

  • 現場での互換性・汎用性を重視する
  • 他の工具もマキタで揃えたい(バッテリー共有)
  • 修理・サポート網の広さを重視したい
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マキタ (Makita) TD173D

18V充電式インパクトドライバ TD173D

マキタ18Vフラッグシップ。2023年1月発売、全周リング発光LEDライト採用。

  • 最大締付トルク 180N・m
  • 全周リング発光LEDライト(従来比2.5倍)
  • バッテリ含み質量 1.5kg
  • バッテリ後方オフセット重心

※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。

HiKOKI(ハイコーキ)

特徴

ここでは36VマルチボルトのWH36DDを比較します。電池を18V工具とも共用する場合は、相手の工具がその電池に対応するかを確認します。

屋内配線工事での位置づけ

HiKOKIの特徴は36Vマルチボルトによる高出力です。18V/36V両対応の電池で36V機を動かせるのが強みで、本記事の比較3機種では WH36DD が1.6kgと最も重く、軽さで選ぶ理由にはなりません(各社カタログ公表値)。

インパクトドライバー(WH36DD など)は、細ビスモード(Bluetooth電池とアプリで設定)でカムアウトを抑えられるのが特徴です(規定トルクで止まる機能ではありません)。

また、HiKOKIはバッテリーの互換性が広い「マルチボルト」を採用しており、18V機器と36V機器の両方に使えるという独自の強みがあります。

気になる点:比較表の電池装着条件では1.6kgです。細ビスモード等のアプリ設定には、Bluetooth対応電池とアプリが必要です。購入するセットに必要な電池が含まれるか確認してください。

こんな人におすすめ

  • 36Vの高出力を活かしたい
  • マルチボルトでバッテリーを共通化したい
  • HiKOKI(旧日立)のファンである

パナソニック(Panasonic)

特徴

家電・建材の大手がリリースする電動工具ブランド。コードレスインパクトドライバーは電設工具として長く展開されてきたブランドです。現行のフラッグシップは EZ1PD1(14.4V/18V デュアル、2021年8月発売の EXENA Pシリーズ第一弾)で、全長98mm(18V 5.0Ah 電池装着時で全高約243mm、幅約59mm)を実現しています。なお「業界最短」は2021年6月1日時点の国内メーカー14.4V/18Vクラスにおける自社調べ表記です。

屋内配線工事での位置づけ

パナソニックの EZ1PD1 は、打撃力の強・中・弱切替とモーターのスピード・パワー制御を備えます(規定トルクで止まるトルク管理機能ではありません)。電設工事(電気工事)向けの機種は、コンパクトな設計でスイッチボックスの狭い場所での取り回しがしやすく、EZ1PD1 は全長が短いことでスイッチボックス内の作業でも取り回しが楽です。

充電時間はカタログの公表値を確認してください(本記事では比較評価しません)。

気になる点:14.4V用と18V用で、電池込みの質量・高さ・最大締付トルクが変わります。事業移管後の販売・修理案内と、使用する純正電池の品番も確認してください。

こんな人におすすめ

  • 電設工事専業でパナソニック製品に統一したい
  • 打撃力を細かく切り替えたい
  • パナソニックの充電システムをすでに持っている

3社主力モデル スペック比較表

実測していない特性を点数化するレーダーチャートは用いず、次の表で公式の公表値と比較条件を確認します。

各社の電気工事士向け主力インパクトドライバーのスペックを並べました。重さ・トルク・打撃数・本体長のような体感に直結する数値を中心に比較してください。

項目マキタ TD173DHiKOKI WH36DDパナソニック EZ1PD1
電圧18V36V(マルチボルト)14.4V/18V デュアル
最大締付トルク180 N·m200 N·m155 N·m(18V時)
本体重量(電池込)約 1.5kg(BL1860B)約 1.6kg(BSL36A18BX)約 1.5kg(18V 5.0Ah)
ヘッド長111mm111mm98mm(2021年6月時点・14.4V/18Vクラス国内メーカー自社調べ)
回転数(記載したモード)0〜3,600 min⁻¹(最速)0〜3,400 min⁻¹(パワー)0〜2,700 min⁻¹(強)
打撃数(記載したモード)0〜3,800 min⁻¹(最速)0〜4,100 min⁻¹(パワー)0〜4,100 min⁻¹(強)
LED作業灯ありありあり(スイッチ連動/手動ON/手動OFF)
バッテリー互換18V LXT18V/36V マルチボルト14.4V用・18V用の両電池が装着可(デュアル)
価格各社公式の希望小売価格・販売店で確認(本記事では相場額を示しません)同左同左

※質量はTD173D=BL1860B、WH36DD=BSL36A18BX、EZ1PD1=18V 5.0Ah(EZ9L54)装着時。電池条件は統一されていないため、質量だけで疲れにくさを順位付けしません。WH36DDの111mmはメーカー表記の「ヘッド長」で、機体全長は118mmです。回転数・打撃数は表中のモードの値で、全モードの最大値を並べたものではありません。価格は示していません。

比較表の出典

機種製品情報・説明書確認する項目
マキタ TD173D公式製品検索・取扱説明書PDF主要機能、BL1860B装着条件、各モード
HiKOKI WH36DD公式製品情報・取扱説明書PDF電池条件、ヘッド長と機体全長、アプリ設定の条件
パナソニック EZ1PD1発売時の公式製品発表・取扱説明書PDF18V/14.4Vそれぞれのトルク、電池込み寸法・質量

上表の主要仕様と資料は2026年10月30日に照合しました。最大締付トルクは各社の試験条件による値で、すべてのねじ・材料でその値になる意味ではありません。

注目ポイントの読み方

  • トルク重視で選ぶなら HiKOKI WH36DD(36Vの恩恵で200N·m)
  • 狭所作業の取り回しなら パナソニック EZ1PD1(全長98mm、2021年6月時点で14.4V/18Vクラス国内メーカー最短をうたう)
  • 18V LXTを共用するなら マキタ TD173D(手持ちの電池の対応が前提)

結論:どれを選ぶべきか

重視する条件比較する機種・確認点
手持ちの電池を活用したいメーカー名だけでなく、電池の品番と工具の対応表を照合
最大締付トルクを重視WH36DD:200N·m。実際の締付能力は材料・ねじ・作業条件にも依存
ヘッドの短さを重視EZ1PD1:全長98mm。装着する電池を含めた寸法も確認
TD173Dを含め総合比較したい上の公式スペック表で質量・寸法・モードを比較し、販売価格と修理窓口を確認

※用途に応じた編集上の選び方です。メーカー全体の優劣や、寿命・施工結果を保証するものではありません。

すでに対応電池を持っているなら、その規格の工具から比較すると追加購入を抑えられます。別メーカーを追加する場合は、工具本体に加えて電池・充電器も必要かを確認してください。初めて購入する場合も、上の条件を満たすかを順番に照合し、知名度だけで決めないことを勧めます。

同じメーカーでも、電圧・シリーズ・品番が違えば電池を使えない組合せがあります。 工具本体と電池の両方の公式対応情報を照合してください。パナソニックのDual対応は、工具が14.4V用・18V用の電池を使い分けられる意味で、電池自体が両電圧共通という意味ではありません。

購入前の確認順序

  1. 手持ちの工具・電池の品番と、候補機の公式対応表を照合する。
  2. 作業に必要な締付能力・モード・本体寸法・電池込みの質量を比較する。
  3. 本体だけでなく、必要な電池・充電器を含めた総額を確認する。
  4. 修理窓口と、購入時点のメーカー公式案内を確認する。

まとめ

3社の比較をまとめると以下のとおりです。

  • マキタ TD173D:18V LXTの対応電池を持っている場合に比較しやすい
  • HiKOKI:36Vマルチボルトで高出力。サブ機としても有力
  • パナソニック:全長98mmで狭所に強く電設専業向き(筆者の見解)

3社とも電気工事で使われているブランドです。自分の作業スタイルと予算に合わせて選んでみてください。

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よくある質問

マキタとHiKOKIのバッテリーは互換性がありますか?
メーカーをまたぐ互換性はありません。同じメーカー内でも、電圧・機種によって使えない組合せがあるため対応表で確認してください。サードパーティ製の互換バッテリーはありますが、非純正品に起因する故障・事故はメーカー保証の対象外とされるのが一般的で、プロ用途では推奨しません。
初めての一台はどれを買えばいいですか?
手持ちの対応電池、必要な締付能力、作業場所に収まる寸法を先に確認してください。18V LXTを共用するならTD173D、36Vマルチボルトを使うならWH36DD、短いヘッドを重視するならEZ1PD1が比較候補です。電池・充電器を含む総額と修理窓口も確認します。なおTD002Gは40Vmaxで、18V LXTとは別の電池規格です。
18Vと36V、どちらがおすすめ?
屋内電気工事のメイン用途なら18Vで十分です。36Vは太い造営材への長いビス留めなど高負荷作業向け(コンクリートの穴あけは振動ドリル等の用途)。HiKOKIのマルチボルトなら18V機器と36V機器でバッテリー共通化できるため、両方使う場合には有力な選択肢です。
電動工具は技能試験で使えますか?
使えません。電気工事士技能試験では**電動工具の使用が認められていません**(電動工具以外の工具は使用できます。使用可能な工具はその年度の受験案内に従ってください)。試験対策では[VVFストリッパーや圧着工具](/articles/shiken-kougu-guide/)を揃えてください。
中古のインパクトドライバーは買っても大丈夫?
本体も使用歴・落下・摩耗で状態が大きく異なり、特にバッテリーは使用歴によって劣化度が大きく異なるため新品を勧めます。Li-ionバッテリーは充放電サイクルで容量が減るため、中古バッテリーは早期に容量が落ちている場合があります。