「分電盤を開けてみたけど、どれが何のブレーカーか分からない」「契約電流をUPすべき?」「リフォームのついでに分電盤を交換したいが容量はいくつ?」

これらは住宅オーナー・施設管理者・電気工事士の駆け出しからよく受ける質問です。分電盤は家中の電気の心臓部であり、選定を間違えるとブレーカーが頻繁に落ちる・最悪は火災につながります。

この記事では、第一種電気工事士が、主幹・分岐・漏電遮断器の役割から、エリア別の主幹容量の決め方(契約電流との対応関係)、JIS規格・電技解釈の根拠、主要メーカーの分電盤比較、リフォーム時の交換タイミングまでを「現場で迷わない・法令に準拠する」という2軸で整理しました。

分電盤の基本構造(30秒で分かる)

住宅用分電盤は、外から入ってきた電気を各部屋・各回路に振り分ける装置です。中身は大きく3種類のブレーカーで構成されています。

  • 主幹ブレーカー(メインブレーカー)— 家全体の総電流を監視し、過電流で全停電させる
  • 漏電遮断器(ELB/RCD)— 電気の漏れ(地絡)を検知して全回路を遮断する
  • 分岐ブレーカー(小ブレーカー)— エアコン・キッチン・コンセントなど回路ごとに保護する

「主幹ブレーカー」「メインブレーカー」「アンペアブレーカー」の違い

呼び方が紛らわしいので先に整理します。結論から言うと、主幹ブレーカーとメインブレーカーは同じものです。呼び方が違うだけで、別物ではありません。別物なのはアンペアブレーカーのほうです。

呼び方主幹ブレーカーとの関係設置するのは役割
主幹ブレーカー / メインブレーカー同じもの(呼称違い)建物側(分電盤の一部)家全体の過電流保護。分岐ブレーカーの手前に入る
アンペアブレーカー(リミッター/電流制限器)別物電力会社契約アンペアを超えたら遮断する
漏電ブレーカー(漏電遮断器)主幹に内蔵されていることが多い建物側漏電(地絡)を検知して遮断

アンペアブレーカーはスマートメーターの普及で減っており、関西・中国・四国・沖縄はもともと最低料金制なので設置されていません。なお電流制限器の取り付け・取り外しは、電気工事士法施行令 第1条第三号で「軽微な工事」に位置づけられており、電力会社側が扱います。

最近の住宅分電盤では**主幹に漏電機能を内蔵した「漏電ブレーカー兼主幹」**が標準で、左から順に「主幹(漏電付き)→分岐ブレーカー20A×N回路」と並びます。

住宅分電盤の基本構造引込線(電力会社)スマートメーター主幹(漏電内蔵)30〜60A母線(導体バー)分岐20A分岐20A分岐20A分岐20A照明コンセントエアコンIH赤=主幹(漏電内蔵)橙=分岐ブレーカー太線=母線(バー)
図1: 住宅分電盤の構造(漏電機能内蔵の主幹→分岐)

図B: 主幹・母線・分岐の役割

主幹(漏電機能内蔵)から母線を通り、それぞれの分岐ブレーカーへ供給する役割を示します。機器の正面配置・端子位置・L/Nの結線を示した図ではありません。

主幹で全体を保護し、各分岐で回路を保護主幹ブレーカー過電流保護+漏電保護この例は1台に内蔵母線分岐ブレーカー分岐ブレーカー分岐ブレーカー照明などの回路コンセントなどの回路専用回路など主幹の一次側は、主幹を切っても充電されたままです回路の線心数・電圧・遮断器容量は、この1本線から判断せず設計・製品図面で確認
図2: 漏電機能内蔵の主幹→母線→各分岐(役割を示す単線模式図。実配線・端子・製品配置は省略)

主幹・分岐・漏電遮断器の役割比較

ブレーカー役割一般的な容量トリップ条件
主幹家全体の過電流保護30A〜60A(住宅)電気用品安全法の技術基準・JIS C 8211 とメーカーの動作特性曲線による(電技解釈第33条の表は電安法適用品を除く規定)
分岐各回路の過電流保護20A(住宅標準)同上(過負荷は時延、短絡時は瞬時)
漏電地絡(漏れ電流)保護定格感度電流30mA/高感度高速形定格感度電流以上の漏れ電流で0.1秒以内に遮断

主幹ブレーカー(メインブレーカー)の選び方

主幹ブレーカー(主幹過電流遮断器)は幹線を保護する装置で、定格は幹線の許容電流以下で選びます(電技解釈第148条)。一方、契約アンペアを制限するのは電力会社の**アンペアブレーカー(またはスマートメーターの計器SB)**で、主幹とは別の装置です。アンペア制エリアでは契約アンペアに見合う幹線・主幹になっているかを確認しますが、主幹=契約アンペアという一対一の決まりはありません(契約より大きい定格の主幹を幹線容量の範囲で付けることもあります)。

契約アンペアと同時使用の目安(アンペア制エリア)

契約アンペア制限する装置同時使用の目安(100V換算)
30A契約アンペアブレーカー/計器SB約3,000W
40A契約同上約4,000W
50A契約同上約5,000W
60A契約同上約6,000W

※単相3線式で200V機器を使う場合、線電流の目安は「消費電力÷200V」ですが(例:2kWの機器なら約10A。実際の電流は力率で変わるので銘板・仕様書の値を優先)、契約アンペア(100V換算)の計算では2倍の20Aとして数えます(電力会社の案内による)。またこの10Aは2本の電圧線それぞれに流れます。100V機器はどちらか一方の電圧線に接続されるため、主幹の各極に流れる電流は「200V負荷の電流+その相につながる100V負荷の電流」になります。単純に全機器の電流を足した値ではありません(負荷の不平衡も考慮が必要です)。

アンペア契約 vs スマートメーター時代の選定(アンペア制エリア)

2016年の電力小売自由化以降、東京電力など多くの電力会社でスマートメーターが標準化されました。スマートメーター内に契約電流値を設定する「計器SB設定」が広がっており、従来のアンペアブレーカー(赤いリミッター)は新設・更新時に廃止される方向です。

  • 従来の単相3線式:スマートメーター → アンペアブレーカー → 主幹(漏電内蔵)→ 分岐
  • 計器SB設定後:スマートメーター(契約電流内蔵)→ 主幹(漏電内蔵)→ 分岐

そのため新築・分電盤更新では「リミッタースペースなし」モデルが選ばれることが増えています。ただし計器SB・アンペアブレーカーの扱いは供給区域・契約・既設設備によって異なるため、分電盤を発注する前に電力会社(一般送配電事業者)へ仕様を確認してください。パナソニック「コスモパネル」や河村電器「ENシリーズ」とも、リミッタースペース有無の両ラインナップが現行品にあります。

なお関西・中国・四国・沖縄では、旧一般電気事業者の従量電灯(規制料金)にアンペアブレーカーがなく、分電盤は以前からリミッタースペースなしのモデルが基本でした。

ただし小売全面自由化以降は、契約する小売電気事業者や料金メニューによって契約容量の決め方が異なります。実際の契約がアンペア制かどうかは、供給地点の契約内容で確認してください。

主幹容量の目安(家族構成・機器別)

世帯構成契約アンペアの目安(筆者の見解)主幹
単身・1K20〜30A幹線容量で決める
2人暮らし30〜40A同上
3〜4人家族40〜50A同上
4人以上+オール電化60A以上またはkVA契約同上

オール電化住宅ではIH(最大5.8kW=29A/200V換算)+ エコキュート + 床暖房 + エアコンが同時稼働する可能性があり、60A契約または8〜10kVA以上のkVA契約が一般的です。

※この表の「推奨契約A」はアンペア制エリア向けです。最低料金制エリア(関西・中国・四国・沖縄)は契約アンペアがないため、右端の「主幹容量」列と前掲の住宅面積の目安を使ってください。

図A: 家族人数×ライフスタイル別 アンペア早見表

家族構成と主要機器の組み合わせから、推奨契約アンペアと月額基本料金の目安をまとめました(アンペア制エリア向け)。

世帯主な機器推奨アンペア月額目安
1人暮らし(ワンルーム)冷蔵庫・電子レンジ・エアコン30A約935円
2人暮らし(夫婦)+ドライヤー・洗濯機40A約1,247円
3〜4人ファミリー+食洗機・複数エアコン50A約1,559円
4人以上+IH/EV充電+IHクッキングヒーター・EV充電60A約1,871円

※東京電力エナジーパートナー「従量電灯B」の基本料金(2026年5月時点・税込)。金額は電力会社・契約プランで異なるため、最新値は各社公式サイトでご確認ください。関西・中国・四国・沖縄は最低料金制で基本料金・契約アンペアの区分がないため、この表は該当しません。

分岐ブレーカーの選び方

分岐ブレーカーは住宅では20Aが標準です。20A の配線用遮断器に VVF 1.6mm(許容電流18A)を組み合わせられるのは、電技解釈第149条の表(149-1表)が「15A超20A以下の配線用遮断器」に対して直径1.6mm以上の軟銅線を認めているためです。

なぜ20Aが標準か(許容電流と電流減少係数)

内線規程の許容電流をおさらいすると:

  • VVF 1.6mm-2c:許容電流 18A(気中布設・周囲温度40℃の基底値、2心)
  • VVF 2.0mm-2c:許容電流 23A(同上、2心)
  • 絶縁電線(IV等)を合成樹脂管・金属管などに3本以下収める場合:× 0.70 を掛ける(電技解釈 第146条の電流減少係数。VVF 等のケーブルを束ねる・管に入れる場合はメーカーの許容電流表で補正を確認)

20A配線用遮断器分岐回路は電技解釈第149条(149-1表)で電線の太さ1.6mm以上(VVF 1.6mm-2c=許容18A)が条件であり、これが住宅の一般コンセント・照明回路の標準的な組み合わせです。一方、エアコン専用回路など連続大電流が流れる回路では、許容電流に余裕を持たせるためVVF 2.0mm-2c(許容23A)への格上げが推奨されます。詳細は電線の許容電流ガイドを参照してください。

エアコン専用回路の考え方(回路容量は機種の指定に従う)

エアコンは起動時のラッシュ電流が大きいため、専用回路化が内線規程で推奨されています。

  • ブレーカー:20A(機種の据付工事説明書の指定に従う。電線サイズもセットで指定される)
  • 配線:VVF 2.0mm-2c(許容23A)
  • コンセント:機種のプラグ形状に合わせた接地極付コンセント(125V15A/125V20A/250V15A・20Aなど。据付工事説明書の指定に従う)

IH調理器・電子レンジ・電気温水器は専用回路

連続大電流機器は専用回路にします。下表は代表例で、必要な遮断器容量・電線は機種の据付工事説明書の指定が優先です。

機器推奨ブレーカー推奨配線
IHクッキングヒーター(200V/30A)30A単相200VVVF 2.6mm-2c または CV 5.5sq ※機種の指定を優先
電子レンジ・オーブン20AVVF 2.0mm-2c
エコキュート20A単相200VVVF 2.0mm-2c
食洗機20AVVF 2.0mm-2c
ウォシュレット機種の施工説明書に従う(単独回路・接地を指定する機種あり)施工説明書の指定

漏電遮断器(ELB/RCD)

漏電遮断器(ELB / RCD:Residual Current Device)は、電線から人体や大地への漏れ電流を検知して回路を遮断する保護装置です。主幹に内蔵されているのが住宅の標準形です。

役割と動作原理

漏電遮断器の中には零相変流器(ZCT)が組み込まれており、電路の全導体(単相2線なら L・N、単相3線なら L1・N・L2 の3線)を通る電流のベクトル和を監視します。

  • 正常時:行きと帰りの電流の合計はゼロ
  • 漏電時:一部が大地に漏れる → 合計がゼロにならない → ZCTが検知 → 接点遮断

30mA トリップが標準

JIS C 8222:2021(住宅及び類似設備用漏電遮断器―過電流保護装置付き/RCBOs)に適合する製品が住宅用に使われます。以下の感度・動作時間の区分はメーカーカタログで一般に用いられている分類で、規格の条文そのものではありません。実際の選定は製品仕様で確認してください。

区分定格感度電流動作時間
高感度高速形(住宅標準)30mA以下(5・6・10・15・30mA)0.1秒以内
中感度形30mA超〜1000mA0.1秒以内(高速)または0.1〜2秒(時延形)
低感度形1000mA超0.1秒以内または時延

住宅では30mA / 0.1秒以内が事実上の標準です。人体への危険は通電経路・時間・電流で決まるため、小さな感度電流・短い動作時間で早く切ることが安全側に働きます。

漏電ブレーカー選定早見表(3ステップ)

漏電ブレーカーの選定は「①付けるか → ②定格電流 → ③感度」の順に決めます。

決めること住宅での選び方根拠
① 付けるか金属製外箱を持つ60V超の低圧機械器具に接続する電路は原則必要。ただし乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のない場所、二重絶縁構造の機器などは除外規定あり電技解釈 第36条第1項(第一号〜第八号の除外)
② 定格電流(A)回路の設計電流と上位の過電流遮断器との保護協調で選ぶ(住宅では主幹と同じ定格にすることが多い・筆者の見解)。漏電機能内蔵の主幹なら1台で兼ねる製品仕様。なお主幹の過電流遮断器の定格は幹線の許容電流以下である必要がある(電技解釈 第148条第五号)
③ 定格感度電流・動作時間30mA/0.1秒以内(高感度高速形)メーカーカタログの区分。法令が数値を定めているわけではない

なお300Vを超える低圧電路についても施設義務がありますが、これは第36条第3項の規定で、対象は「高圧または特別高圧の電路と変圧器によって結合される」電路に限られます。住宅の単相3線式(100V/200V)は該当しません。

高感度・低感度の使い分け

  • 高感度(30mA):住宅・事務所・店舗の主幹/感電保護目的
  • 中感度(100〜500mA):工場・動力設備/漏電火災防止目的
  • 低感度(1000mA超):大容量の低圧幹線など/設備保護目的(高圧側の地絡保護は GR・DGR 等の保護継電器で行うもので、低圧用の漏電遮断器ではない)

住宅用として選定するなら高感度30mAが基本と覚えてください(分電盤・ブレーカーの工事自体は電気工事士の資格が必要で、DIYの対象ではありません)。

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過電流遮断器の選定(許容電流との関係)

過電流遮断器(配線用遮断器、JIS C 8211)は、配線の許容電流以下の定格で選定するのが原則です。

ブレーカー定格電流 ≦ 許容電流の原則

電技解釈 第33条は配線用遮断器の動作特性(定格電流の1倍で動作しない・1.25倍で60分以内・2倍で2分以内、30A以下の場合)を定めていますが、電気用品安全法の適用を受けるものは除くと明記されています。住宅用の配線用遮断器は電安法の対象品なので、実際の動作特性は電安法の技術基準・JIS C 8211 と各メーカーの特性曲線で確認します。

この特性から、連続使用機器では機器電流・ブレーカー定格・電線の許容電流の間に余裕を持たせます。ただし**「ブレーカー定格 ≦ 許容電流 ÷ 1.25」という一律の式ではありません**(この式だと1.6mm・18Aの回路に20Aブレーカーを付けられなくなり、電技解釈第149条が認める住宅の標準的な組み合わせと合いません)。分岐回路の組み合わせは電技解釈第149条の規定に、個別機器は施工説明書の指定に従って選定してください。

計算例:配線とブレーカーの組み合わせ

配線許容電流(基底)推奨ブレーカー
VVF 1.6mm-2c18A15A または 20A(20Aは余裕薄め)
VVF 2.0mm-2c23A20A(標準)
VVF 2.6mm-2c32A30A(IH等)

連続使用機器の考え方

連続して定格に近い電流が流れる機器では、機器電流とブレーカー定格・電線の許容電流に余裕を持たせます。ただし**「一律に機器電流×1.25倍のブレーカーを選ぶ」という決まりはありません**。

例:電気温水器 4.0kW / 200V = 20A(連続)
→ 遮断器容量・電線サイズは、その機器の据付工事説明書の指定に従う

配線用遮断器は定格をわずかに超えた過負荷ではすぐには動作しない(時延特性)ため、機器電流と遮断器定格が近すぎると、保護が働く前に電線側が過熱するおそれがあります。一方で、遮断器容量を機器の指定より大きくすると保護協調を損ないます。

そのため実務では、機器の据付工事説明書が指定する「専用回路・遮断器容量・電線サイズ」をそのまま採用し、電線の許容電流・電圧降下・保護協調は設計者が個別に確認します。

計算例:30A契約で何W使える?

主幹容量と同時使用機器の関係を、よくある質問形式で計算してみます。

図C: 同時使用機器の容量計算ビジュアル

朝の身支度〜料理の時間帯に同時稼働しがちな機器のW数を加算すると、契約30Aではすぐにオーバーします。

同時使用機器の合計アンペア計算ドライヤー1200W(12A)+電子レンジ1500W(15A)+エアコン1000W(10A)+照明・冷蔵庫等800W(8A)=合計45A4500W!30A契約を超える概算例:遮断のおそれ→ 同時使用を避ける。契約変更は設備容量も確認して検討契約容量との比較30A上限45A(上限の150%)※100V換算の概算。1A=100Wが目安(実電流は力率で変わる。200V機器は2倍で数える)
図3: 同時使用機器の合計アンペア計算(30A契約はNGの例)

例1:30A契約で電子レンジ+炊飯器を同時に使える?

1400W電子レンジ / 100V = 14A
1300Wドライヤー / 100V = 13A
800W炊飯器 / 100V = 8A
合計 = 35A(100V換算)

35A > 30A → アンペアブレーカー(計器SB)が作動します。

同時使用を避けるか、40A契約にUPするのが現実解です(機器の消費電力は例。実際は各機器の銘板で確認)。

例2:50A契約でオール電化の朝の同時使用は耐えられる?

IH調理器 2.8kW(200V) = 線電流14A → 100V換算 28A
エコキュート 2kW(200V) = 線電流10A → 100V換算 20A
ドライヤー 1.2kW(100V) = 12A
照明・冷蔵庫等 = 5A
合計 ≒ 65A(100V換算の概算。機器の消費電力は例)

60A契約でも超過します。 オール電化ではこのように200V機器の換算が効いてくるため、kVA契約への変更や同時使用の運用が必要になります。

主要メーカーの分電盤比較

住宅分電盤の主要3メーカーの特徴を整理します。

パナソニック「コスモパネル」「スマートコスモ」

住宅用分電盤の代表的なメーカーで、新築住宅・リフォームの両方で広く採用されています。

  • コスモパネル:標準シリーズ。リミッタースペース有/無、フタ付/フタなしから選択。
  • スマートコスモ(マルチ通信型):HEMS連携・太陽光発電・蓄電池対応。全分岐回路に分岐電流センサ標準搭載で「電気の見える化」が可能。AiSEG2と連携する家庭向け。
  • 太陽光発電の遠隔出力制御に対応(条件によりアダプタ等が別途必要。対応可否はメーカーの製品仕様で確認)。

河村電器「ENシリーズ(enステーション)」

住宅用分電盤の主要メーカーの一つ。

  • ENシリーズ(標準):オーソドックスな分電盤。
  • enステーション避雷器付:雷サージ対策モデル。

日東工業「HCD形ホーム分電盤」

産業用・施設用に強いメーカー。住宅用ホーム分電盤は、旧 HCB/HPB 形から HCD/HPD 形にモデルチェンジしています(日東工業のモデルチェンジ案内、2020年1月)。既設で HCB 形を見かけることはありますが、新規に選ぶなら現行の HCD 形をメーカーサイトで確認してください。

選定の目安

重視ポイントおすすめメーカー
HEMS・太陽光・スマートホームパナソニック スマートコスモ
コスパ・配線のしやすさ河村電器 ENシリーズ
扉付き・店舗併用住宅日東工業 HCD
標準的な戸建て新築パナソニック コスモパネル

リフォーム時の分電盤交換タイミング

分電盤内の遮断器には更新の目安があります。住宅用分電盤の内蔵ブレーカーは製造後13年が更新推奨時期とされており、これは一般社団法人 日本電機工業会「住宅用分電盤用遮断器の更新推奨時期に関する調査報告書」(平成8年3月)に基づくもので、パナソニックなど分電盤メーカー各社が交換の目安として案内しています。

経年劣化の見分け方

次のサインがあれば交換を検討してください。

  • 本体に黄ばみ・割れ・焦げ跡がある
  • ブレーカーが頻繁に落ちる(接点劣化の可能性)
  • 漏電遮断器のテストボタンを押しても動作しない
  • 熱を持っている・焦げ臭い

容量UPが必要なサイン

  • 契約UP(40A→60A等)の予定
  • IH・エコキュート・EV充電器の新設
  • 太陽光発電・蓄電池の新設
  • リフォームで部屋数・回路数が増える

EV充電器(200V/15〜30A)を新設する場合、主幹容量と空き分岐スペースの確保が必須で、既設盤の空き回路・主幹・幹線容量が足りなければ交換が必要になります。

交換費用の考え方

費用は「分電盤本体の交換だけか」「主幹容量も上げるか」「HEMS対応機種にするか」「引込線・幹線まで交換するか」で段階的に上がります。金額は地域・業者・機種構成で大きく変わるため、本記事では目安額を示しません。複数の電気工事業者から、工事範囲を揃えた見積もりを取って比較してください。

電気工事士の資格と分電盤工事

分電盤の工事は電気工事士法 第3条により有資格者の作業です。住宅など一般用電気工作物なら第二種電気工事士以上、ビル・工場など最大電力500kW未満の自家用電気工作物なら原則として第一種電気工事士が必要です。

第二種電気工事士で施工できる範囲

  • 住宅(一般用電気工作物・600V以下)の分電盤交換
  • 主幹・分岐ブレーカーの交換・増設
  • 漏電遮断器の交換
  • 引込線・計器まわりの工事(電力会社の工事区分・申請・登録電気工事業者の要件が別途あります)

第一種電気工事士が必要な範囲

  • 最大電力500kW未満の自家用電気工作物(中小ビル・工場の高圧受電設備等)の電気工事
  • ビル・工場の動力盤・配電盤
  • 高圧キュービクルからの幹線(高圧部分)

なお、最大電力500kW以上の自家用電気工作物の電気工事は電気工事士法の規制対象外(電気主任技術者の監督下で施工)です。

分電盤工事に必須の関連工具

分電盤工事や竣工検査・点検で使う主な工具です。

絶縁抵抗計(メガー)— 配線後の絶縁確認

分電盤交換後は絶縁抵抗測定で絶縁性能を確認します(測定が困難な場合は電技解釈第14条の漏えい電流1mA以下による確認も認められています)。電気設備技術基準(省令)第58条の判定値は、使用電圧300V以下では、対地電圧150V以下の場合0.1MΩ以上、その他の場合0.2MΩ以上、使用電圧300Vを超える低圧電路では0.4MΩ以上です。実務上はこの条件を満たしていることを必ず確認します。詳細は絶縁抵抗計の使い方、判定値の表は共立電気計器「絶縁抵抗計ガイドブック」を参照してください。

低圧用検電器 — 活線確認

主幹ブレーカーをOFFにしても、引込線側は常時活線です。作業前後で検電器による安全確認は省略できません。

リングスリーブ用圧着工具 — 接続部の信頼性

分電盤内の結線は、盤・ブレーカー・端子台それぞれの施工説明書が指定する端子・電線・締付トルクに従います。端子へ直接結線する箇所を圧着接続に置き換えてはいけません。電線相互を接続する箇所では、接続部と端子・スリーブに適合した工具(リングスリーブなら JIS C 9711 適合品)で確実に圧着します。

よくある質問

主幹ブレーカーが頻繁に落ちます。容量を上げれば直りますか?
まず原因の切り分けが必要です。アンペアブレーカー(計器SB)が落ちているなら契約アンペアの見直しで解決することがあります。主幹ブレーカー自体が落ちる場合は、契約変更では直らず、主幹・幹線の容量や負荷の分け方を電気工事士が確認します。漏電や接点劣化が原因なら容量UPでは直りません。主幹ブレーカーのテストボタンが動作するか、絶縁抵抗測定で漏電がないかを確認してください。分電盤本体に一律の交換推奨年はありませんが、内蔵ブレーカーの更新推奨(製造後約13年)を超えているなら、本体ごとの交換を検討してください。
漏電遮断器のテストボタンは月に何回押すべき?
テスト周期は製品によって異なる(月1回・半年に1回など)ため、設置している製品の取扱説明書に従ってください。テストボタンを押してOFFになれば正常、ならない場合は故障の可能性が高いため、即座に電気工事士へ点検依頼してください。テストでOFFになった後は、漏電遮断器をON位置に戻せば復旧します(主幹と漏電遮断器が別体の分電盤では、動作した漏電遮断器そのものを戻します)。
分岐ブレーカーは20Aで全部統一していい?
住宅の一般回路は20Aが標準です。IH調理器・200Vエアコン・電気温水器などの大電流機器は専用回路が必要ですが、**必要な遮断器容量・電線サイズ・接地方式は機種ごとに異なります**。カタログの代表値ではなく、設置する機種の据付工事説明書の指定に従ってください。電線と遮断器はセットで設計するのが鉄則で、1.6mm-2c は15Aまたは20A(20Aは余裕薄め)、2.0mm-2c は20A、2.6mm-2c は30Aが代表的な組合せです。
古い分電盤に漏電遮断器がついていません。違法ですか?
電技解釈 第36条により、金属製外箱を有する60V超の機械器具に接続する電路などで漏電遮断器の施設が義務付けられています(300V超の低圧電路の規定は、高圧・特別高圧と変圧器で結合される電路が対象)。住宅の一般的な100V回路では条件付きで省略可能なケースもありますが、現在の内線規程・住宅安全基準では設置が標準です。漏電遮断器なしのまま使用する場合は、感電・漏電火災のリスクが高くなるため、有資格者による点検と早期更新を推奨します。
分電盤を自分で交換できますか?
できません。電気工事士法 第3条により、住宅であっても分電盤の交換工事は有資格者の作業です。契約容量や引込線・計量器に関わる変更を伴う場合は、電力会社への申込みも必要になります。無資格工事は感電・火災のリスクに加え、罰則(電気工事士法 第14条:3月以下の拘禁刑又は3万円以下の罰金/2026年8月時点)の対象です。資格取得を考えている方は[コンセント増設DIYの可否](/articles/consent-zousetsu-kyoukaisen/)で第二種試験のロードマップも紹介しています。
スマートコスモとコスモパネルの違いは?
コスモパネルは標準的な住宅分電盤、スマートコスモはHEMS(Home Energy Management System)連携機能を持つ上位モデルです。スマートコスモは全分岐回路に電流センサを内蔵し、AiSEG2等のHEMS機器と接続することで回路ごとの電気使用量を見える化できます。太陽光発電・蓄電池・EV充電を導入する家庭ではスマートコスモが向いています。価格差は機種構成で変わるため、メーカーの価格表や業者の見積もりで確認してください。

まとめ:分電盤・ブレーカー選定の3ステップ

最後に、分電盤・ブレーカー選定の判断軸を3行に圧縮します。

  1. 主幹:原則として幹線の許容電流以下の定格で選ぶ(電動機負荷が大きい場合の例外は電技解釈第148条)。契約アンペアを制限するアンペアブレーカー/計器SBとは別の装置(最低料金制エリアは住宅面積の目安表を参考に)
  2. 分岐:住宅は20A基本、エアコン/IH/電気温水器は専用回路(遮断器と電線の組み合わせは電技解釈第149条の表に従う=20A遮断器に1.6mm可。一律の「1.25倍ルール」はない)
  3. 漏電遮断器:住宅は30mA / 0.1秒以内(高感度高速形)が標準的な選定。施設義務の対象は電技解釈 第36条の条件による

リフォーム・新築での分電盤選定は、家族構成・将来の機器増設・HEMS対応を見越して将来の増設余地を見込んでおくことを筆者は勧めます。

関連記事として電線の許容電流ガイド(ブレーカー選定の前提)、コンセント増設の可否(分岐回路追加の判断)、絶縁抵抗計の使い方(分電盤更新後の絶縁抵抗測定)もあわせて読むと、住宅電気工事の全体像が立体化します。