技能試験の工具は、セットの価格だけでなく、圧着工具の対応範囲と手持ちの工具を比べて選びましょう。
この記事では、第一種電気工事士が、試験センターの案内とメーカー公式仕様・取扱説明書をもとに、指定工具と任意の追加工具を分けて解説します。DK-28とDK-29はVVFストリッパーの有無だけでなく、圧着工具も異なるセットです。
試験センターはJIS C 9711適合のリングスリーブ用圧着工具を指定し、○・小・中・大の刻印が明確に出る工具の準備を案内しています。一方、HOZANは「大」に非対応のP-738を含むDK-28を第二種向けに販売しています。公式案内に合わせて4種類の刻印に対応する準備を優先するなら、P-77等の大対応工具を選ぶのが本記事の推奨です。P-738という型番だけで不合格になると断定する趣旨ではありません(出典:試験センター・2026年版の注意すべきポイント、HOZAN DK-28)。
技能試験で使える工具の基本ルール
技能試験には使用できる工具・用具の制限があります。公式FAQ Q58は受験案内の該当項目を参照するよう案内しています。以下は令和8年度下期受験案内の冊子42・44ページと、2026年版の注意すべきポイントで確認した条件です(2026年10月13日確認)。受験時は最新の案内に従ってください。
- 電動工具は使用不可。電動機能をOFFにしても使用できません
- カッターナイフは使用を控えるよう試験センターより案内あり
- 手工具でも改造工具・自作工具は使用不可。テスタ等の計測器も使用できません
- 電子ノギス等のデジタル表示機能付工具も使用不可
- 支給された保護板以外の下敷き・作業用シート類は使用不可(作業マットは練習用)
- ネジやリングスリーブ等を仮置きする小箱・皿類も使用不可
- 試験中に工具の貸し借りは不可
つまり、当日までに自分の手に合った工具を揃えて練習しておくことが合格への近道です。試験本番で「使いにくい」と感じる工具では、時間内に仕上げるのが難しくなります。
必ず用意したい工具リスト
配置の工夫(右利きの場合の一例・編集部の提案):
- ⭕ 利き手側に主力工具(VVFストリッパー・ペンチ)を配置
- ⭕ 中央は作業スペース、右奥にスケールを常駐させて毎回同じ動作で取れるように
- ⭕ ツールポーチは利き手と逆側に置き、出し入れの動線を最短化

① 電工ナイフ(指定工具)+ VVFストリッパー(追加工具)
電工ナイフは受験案内の指定工具です。VVFストリッパー(ホーザン P-958) は任意の追加工具で、メーカーは外装・芯線被覆のストリップ、切断、のの字曲げに対応すると案内しています。P-958の公式適応ケーブルはVVF・EM-EEFで、VVR・IVは適応対象に含まれません。ナイフ等も使い、ケーブルに適した方法で練習してください(出典:P-958公式仕様、取扱説明書)。
P-958 は本体に 3種類のスケール(表面10〜20cm・5cm刻み/裏面2〜12cm・1cm刻み/裏面10〜20mm・1mm刻み)があり、被覆を剥く長さの目安に使えます。必要な剥き長さは一律ではなく、各問題の配線図・施工条件、器具のストリップゲージに従ってください(出典:DK-28取扱説明書)。
実際のスケールの位置・刻印は、HOZAN公式のP-958製品情報と取扱説明書で確認できます。
② ペンチ
電線(心線)の切断と、ランプレセプタクル・露出形コンセントの結線で使う「の」の字(ワッカ)作りに使います。
③ ドライバー(プラス・マイナス)
端子台やコンセント・スイッチへの配線に必需品。HOZAN のセットではプラス No.2、マイナス幅 5.5mm が採用されています。
④ ウォーターポンププライヤー
受験案内の持参用具に挙げられる工具。アウトレットボックスにねじなし電線管・PF管を接続する際のロックナットの締め付けに使います(候補問題 No.11・No.12 で出題)。
⑤ スケール(メジャー)
ケーブルの寸法出しに使います。
⑥ リングスリーブ用圧着工具
受験案内の指定工具です。JIS C 9711適合のリングスリーブ用を選び、本体表示・メーカー仕様で確認してください。黄色グリップは目印ですが、色だけで判定しないことが重要です。リングスリーブ側の規格はJIS C 2806で、スリーブの選定や圧着マークが不適正なら欠陥となります。欠陥が1つでもあれば不合格です(出典:試験センター・2026年版資料)。
○・小・中・大は刻印の種類です。○は独立したスリーブサイズではなく、小スリーブで1.6mmの単線2本を接続するときの刻印です。HOZAN公式FAQでは、2017年〜2026年度上期の第二種候補問題に「大」を使用する問題はないと説明しています。ただし、その実績から将来の出題や当該年度の工具案内を省略してよいとは言えません。試験センターが案内する4種類の刻印への対応も確認して準備してください。
あると便利な工具
電工用ハサミ
ケーブルの外装や絶縁被覆の細かい切り残し、VVRケーブル内の介在物を整えるための任意工具です。一般に販売されている手動の工具を使い、改造・自作・電動のものは避けてください。使用条件は受験案内に従います。
ゴムハンマー(練習時のみ・小型)
試験本番では原則不要です。 アウトレットボックスを使う候補問題でも、本番では使用するノックアウト穴が抜打ち済みの状態で支給されます。ただし、練習用の教材セットではノックアウト穴が抜打ちされていない場合があり、練習時にハンマーで穴を打ち抜く必要があります。試験当日に持参する必要はありません。
作業マット(練習時用)
練習時に机や床を傷つけないために敷くマットです。試験本番では、支給された保護板以外の下敷き・作業用シート類は使用できません。 自前の作業マットを使う前提で準備しないでください(出典:令和8年度下期受験案内・冊子42ページ「使用を禁止しているもの」、44ページ「工具における注意事項」)。
HOZAN DK-28 vs DK-29 vs バラ買い【徹底比較】
HOZAN DK-28(第二種向け・P-958付き8点セット)
HOZANが第二種技能試験向けに販売するセットです。VVFストリッパー P-958とコンパクトな圧着工具P-738を含みます。価格は税込¥22,220(HOZAN公式の希望小売価格・2026年10月13日確認)。販売店の実売価格は変動します。
含まれる工具(全8点):
- プラスドライバー ⊕No.2
- マイナスドライバー ⊖5.5
- ペンチ
- ウォーターポンププライヤー P-244
- 圧着工具 P-738(リングスリーブ ○(1.6×2本接続)・小・中対応のコンパクト型 / JIS C 9711適合)
- VVFストリッパー P-958
- 電工ナイフ Z-680
- 布尺 SB-67
付属品:
- ツールポーチ SB-66
- 第二種技能試験対策ハンドブック(候補問題13問解説付き)
基本工具とP-958をまとめて購入できます。ただし、付属P-738は○・小・中の刻印に対応し、大には対応しません。試験センターが案内する4種類の刻印への対応を優先する場合は、大対応工具を含む構成を選んでください。メーカーの第二種向けという位置付けと、受験案内の準備条件は分けて確認します(出典:DK-28取扱説明書)。
電気工事士技能試験 工具セット DK-28
第二種電気工事士技能試験向けの工具セット。VVFストリッパー P-958 込みの8点セット。
- 全8点セット(P-738圧着工具・P-958 VVFストリッパー・電工ナイフZ-680・布尺SB-67等)
- ツールポーチ SB-66 付属
- 第二種技能試験対策ハンドブック付属
- 第二種向け基本工具+VVFストリッパー P-958 の8点構成
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
HOZAN DK-29(基本工具のみ・7点セット)
DK-28とはVVFストリッパーP-958の有無と、圧着工具の機種が異なります。価格は税込¥19,030で、DK-28との差は¥3,190(HOZAN公式の希望小売価格・2026年10月13日確認)。圧着工具はP-77で、○・小・中・大の4種類の刻印に対応するJIS C 9711適合品です。「第二種では将来も大を使わない」とは断定せず、当該年度の工具案内に沿って準備してください。
含まれる工具(全7点):
- 電工ドライバー ⊕No.2(D-332-100)
- マイナスドライバー ⊖5.5(D-655-100)
- ペンチ(P-43-175)
- ウォーターポンププライヤー(P-244)
- 圧着工具 P-77(リングスリーブ ○・小・中・大対応)
- 電工ナイフ Z-680
- 布尺 SB-67
付属品:
- ツールポーチ SB-66
- 第二種技能試験対策ハンドブック
構成と基本的な使い方はDK-29取扱説明書の1〜3ページでも確認できます。工具のハンドルは絶縁ではなく、通電している箇所には使用しないでください。切断作業では保護メガネを着用し、割れ・欠け・摩耗・変形がある工具は使用しないよう案内されています。
P-958の買い足しは必須ではありません。 既に持っている適応工具を使う、任意のストリッパーを追加する、ナイフで剥く練習をするなど、作業方法に合わせて選べます。P-958を追加する場合の公式希望小売価格の合計は¥19,030+¥5,566=¥24,596で、DK-28より¥2,376高くなります。ただし圧着工具がP-77とP-738で異なるため、この差だけで割安・割高を決めないでください(P-958公式価格・2026年10月13日確認)。なお、電工ハサミはどちらにも含まれていません。
DK-28 と DK-29 の違いまとめ
| 項目 | DK-28 | DK-29 |
|---|---|---|
| 点数 | 8点 | 7点 |
| 公式希望小売価格(税込) | ¥22,220 | ¥19,030 |
| VVFストリッパー P-958 | ○ あり | × なし |
| 圧着工具・刻印 | P-738 ○・小・中。大は非対応 | P-77 ○・小・中・大。公式案内の4刻印に対応 |
| ツールポーチ SB-66 | ○ | ○ |
| ハンドブック | ○ | ○ |
バラ買いのメリット・デメリット
| 項目 | セット買い | バラ買い |
|---|---|---|
| コスト | セットと追加工具の実売総額で比較 | 手持ち品を除き、必要な工具の実売総額で比較 |
| 手間 | ○ すぐ揃う | △ 選定に時間がかかる |
| 品質 | ○ JIS適合の圧着工具が入っている | △ 圧着工具のJIS適合を自分で確認 |
| カスタマイズ | △ 選べない | ○ 好みに合わせられる |
結論:初受験かどうかだけでなく、圧着工具の対応範囲と手持ちの工具で選びましょう。 公式案内の4種類の刻印への対応を優先するならDK-29等のP-77入り構成が候補です。P-738の小型構成を検討する場合は、大に非対応であることと当該年度の案内を確認してください。
バラ買いは、手持ちの工具を活用したい方や、特定の工具を選びたい方の選択肢です。セット購入でも、受験案内と照合するチェックは省略せず、追加工具を含めた総額で比較してください。
なお、第二種電気工事士の受験申込・試験日程は電気技術者試験センター公式サイトで必ず最新情報を確認してください。
工具選びで失敗しないための3つのポイント
1. JIS規格対応品を選ぶ
| 確認項目 | 適切な準備・使用 | 避ける状態・使用 |
|---|---|---|
| 工具の適合 | JIS C 9711適合・リングスリーブ用と本体表示・メーカー仕様で確認 | 色やブランド名だけで判断する/別用途の工具を使う |
| スリーブとダイス | 電線の径・本数に適合する組合せを選ぶ | スリーブの選定や圧着マークが不適正 |
| 圧着後の確認 | 正しい刻印が識別でき、スリーブに破損等がない | 刻印が識別できない・欠けている等の欠陥 |
| 工具の状態・操作 | 摩耗等を点検し、取扱説明書に従って操作 | JIS適合品だから操作・点検を省いてよいと考える |
2. 練習で使い込んでから試験に臨む
どんなに良い工具でも、慣れていなければ本番で実力が出ません。候補問題13問を一通り練習し(筆者の推奨)、工具の扱いを体に覚えさせましょう。
3. 工具の持参忘れに注意
試験中の工具の貸し借りはできません。セット購入後も、スケールやドライバーを含めた指定工具が揃っているか、前日にチェックリストで確認しましょう。
DK-28とDK-29を検討する人
DK-28を検討する人
- P-958とコンパクトなP-738をまとめて揃えたい方
- P-738の対応範囲と当該年度の工具案内を確認したうえで比較する方
DK-29やバラ買いを検討する人
- 公式案内の4種類の刻印に対応する準備を優先したい方
- 既に適応するストリッパー等を持っている方
- 必要な工具を個別に選びたい方
試験時間40分は令和8年度の候補問題の公表資料で案内されています。図の工程別の時間を一律に決めず、完成後の確認まで含めて練習してください。
まとめ
第二種電気工事士の技能試験で必要な工具をまとめると、以下のとおりです。
- 指定工具:ペンチ、ドライバー(+/-)、電工ナイフ、スケール、ウォーターポンププライヤー、JIS C 9711適合のリングスリーブ用圧着工具。公式案内は○・小・中・大の刻印が明確に出る工具を案内しています
- 任意工具と練習用具を分ける:VVFストリッパーや手動の電工ハサミは任意。作業マットは練習用で、支給保護板以外の下敷き・作業用シート類は本番で使えません
- セットの違い:DK-28はP-958とP-738入り、DK-29はP-958なし・大にも対応するP-77入り。対応範囲・手持ち工具・追加分を含む実売総額で比較してください
工具は一度揃えれば長く使えます。品質の良いものを選んで、練習に集中してください。
工具を揃えたら、次は試験対策の本番です。各問題の難易度・施工ポイント・所要時間は第二種電気工事士 候補問題13問の解説で全問解説しています。実技の前提となる複線図の書き方は複線図の書き方|5ステップで解説で5ステップに整理しました。
よくある質問
- HOZAN DK-28とDK-29、どちらを買えばいいですか?
- 圧着工具の対応範囲と手持ちの工具で選んでください。DK-28はP-958とP-738入りの8点セットで、大の刻印には非対応です。DK-29は大にも対応するP-77入りの7点セットで、P-958は含みません。公式案内の○・小・中・大の4刻印への対応を優先するならDK-29等が候補です。P-958の追加は任意です。公式希望小売価格はDK-28が税込22,220円、DK-29が19,030円、DK-29+P-958が24,596円(2026年10月13日確認)ですが、圧着工具が異なるため同一構成の価格比較ではありません。
- 電動工具を試験に持ち込めますか?
- 電動工具は持参せず、使用しないでください。電動機能をOFFにしても使用できず、試験中の使用は不正行為になります。手工具でも改造・自作のものは使用できません。具体的な条件は当該年度の受験案内に従ってください。
- 圧着工具のJIS規格対応品とは?
- JIS C 9711(屋内配線用電線接続工具)に適合するリングスリーブ用工具です。黄色グリップは目印ですが、色だけでなく本体表示・メーカー仕様で確認してください。JIS適合だけで正しい接続が保証されるわけではなく、電線の径・本数に合ったスリーブとダイスの選択、正しい操作、摩耗等の点検が必要です。P-738は○・小・中、P-77は○・小・中・大の刻印に対応します。
- 工具を中古で揃えても大丈夫ですか?
- 新品・中古の区別だけでは判断できません。刃やダイスの摩耗、割れ、変形等を点検し、メーカーの取扱説明書に従って使える状態か確認してください。使い古した圧着工具で刻印を明確に識別できない場合は欠陥となります。一方、刻印が薄くても○・小・中などの種類を識別できる範囲なら問題ないとHOZANは説明しています。薄さだけで判定せず、異常がある場合は使用をやめてメーカーに確認してください。
- 試験当日に工具を忘れたらどうなりますか?
- 試験中の工具の貸し借りはできません。会場で貸してもらえる前提にせず、受験案内の指定工具と自分が使う追加工具を前日に確認してください。セット購入した場合も、すべての工具を持参するか個別に点検しましょう。
- 試験会場で作業マットを使えますか?
- 支給された保護板以外の下敷き・作業用シート類は使用できません。自前の作業マットは練習用とし、試験本番で使えるとは考えないでください。持参・使用する用具は当該年度の受験案内と試験会場の指示に従ってください。