「電気工事士の腰道具って何が入ってるの?」
この記事では、第一種電気工事士がメーカー公開仕様をもとに、腰道具の構成例10項目を型番つきで整理します。実際に携帯する工具は、業務・作業対象・保護具との適合で決めてください。
工具を選んだ理由や使い方のポイントも合わせて解説するので、これから腰道具を揃えようとしている方にも参考になるはずです。
腰道具とは?
腰道具とは、作業ベルト(腰ベルト)に取り付けるホルスターやポーチに工具を差して、体の周囲に携帯するスタイルの工具セットのことです。
腰道具は、必要な工具を手元に携帯するための方法です。高所や狭い場所では、足場・墜落制止用器具・落下防止対策と干渉しない配置を確認します。工具を携帯できることだけで作業の安全性は判断できません。
腰道具の中心になるのは電工ナイフですが、選び方は現場で使える電工ナイフの選び方で詳しく解説しています。電動工具の選定はマキタ vs HiKOKI vs パナソニック電動工具比較、絶縁抵抗測定はメガー(絶縁抵抗計)の使い方、剥き工具の比較はVVFストリッパー比較も参考になります。
腰道具10項目の構成例と型番

配置を決めるときの確認点:
- 左右の重量の偏りと、抜き差し時の姿勢を確認する
- 使用頻度と利き手に合わせて工具の位置を検討する
- しゃがむ・歩く動作や、足場・保護具との干渉を確認する
- 刃物は刃を収納・保護し、指定された方法で保持する
- ベルトの幅・取付金具・装着方法は、腰袋やホルダーのメーカー指定に合わせる
腰ベルト・サポーター・サスペンダー
ベルトは、腰袋・ホルダーが指定する取付幅や金具との適合、調整範囲、装着方法を確認して選びます。一律の推奨幅や腰痛予防効果は示しません。工具が増えると総重量も変わるため、下の内訳で装備全体を確認します。
腰道具の総重量は、次の内訳で確認します。 工具の本数だけでは重量を決められず、一律の「安全な重量」はここでは示しません。
| 合算するもの | 確認方法 |
|---|---|
| ベルト・腰袋・ホルスター | 使う製品のメーカー公表重量を確認 |
| 手工具・測定器 | 各型番の公表重量を合算 |
| 電動工具 | 装着する電池・ビットを含む条件で確認 |
| 材料・小物 | 実際に携帯する量を量る |
| 装着状態 | 左右の偏り・抜き差し・しゃがむ動作を確認 |
公表値に含まれない部品や小物もあるため、最後に実際の装備一式を量ってください。
工具ホルスター・ポーチ(腰袋)
構成例:ニックス(KNICKS)KC-201D 建築用2段腰袋
工具を差すホルダーと小物をまとめる袋では、収納対象が異なります。ここでは「KC-201D/D1680建築用2段腰袋」を構成例にしています(メーカー公式)。両側D環などの構造、寸法、取付方法はメーカー公式で確認してください。フルハーネス型墜落制止用器具(旧称:安全帯)との併用可否はメーカーに確認してください。なお、高さ2m以上で作業床を設けることが困難なところでフルハーネス型を使う業務(ロープ高所作業を除く)には、墜落制止用器具の特別教育(労働安全衛生規則 第36条第41号)の受講が必要です(厚生労働省Q&A)。
工具①:電工ナイフ
構成例:デンサン DK-670F(折りたたみ式・レンチ搭載タイプ)
電工ナイフはケーブルの外装加工などで使う工具です。適応するケーブルと作業方法を確認し、携帯時は刃を収納・保護します。DK-670F はメーカー公式仕様で リング部に17mm/21mmのレンチ機能を搭載しています。刃長76mm、本体40×180×16mm・150g、開いた刃を固定するライナーロック方式、クリップ付きです。
選定ポイント:刃長、収納時の寸法、ロック方式、必要なレンチサイズを比較します。ロック機構があっても、刃の開閉や手の位置への注意は必要です。実使用での取り回しや耐久性を比較測定した評価ではありません。
電工ナイフ DK-670F(折りたたみ式)
17×21mmレンチ搭載の折りたたみ式電工ナイフ。ライナーロック方式。
- 17×21mmレンチ搭載
- ライナーロック方式で安全
- 折りたたみ式
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
工具②:ペンチ
構成例:フジ矢 1050-175(呼び寸法175mm)
心線の切断・折り曲げ・ジョイント部の整形など、最も出番が多い工具のひとつです。切断能力はメーカー公式で鉄線φ3.0mm/銅線φ3.5mm(型番により異なるため購入時に確認してください)、JIS B 4623:1998(ペンチ)対応の標準モデルです。公式の能力を超える太さの線材を切ると刃こぼれの原因になるので、太物にはケーブルカッターなど、対象の線種・外径に合った切断能力を持つ工具を使い分けてください。
選定ポイント:対象の線材に対する切断能力と、握ったときの開き幅を確認します。メーカー製品情報では切断・つかむ・曲げる・ねじる用途を案内しています。「175」は呼び寸法で、実際の全長とは区別してください。
工具③:ドライバー(プラス・マイナス)
構成例:ベッセル(VESSEL)ボールグリップドライバー No.220(+2×100mm)
器具などのねじ締め・緩めに使います。ここではプラス2番(+2)×軸長100mmを例にしています。ねじの種類・サイズと器具の指定に合う先端を選び、必要に応じてマイナスドライバーなどを用意します。
選定ポイント:メーカー製品情報で先端サイズ・軸長・柄の寸法を照合します。握りやすさは手の大きさや手袋によって変わります。器具の指定締付トルクがある場合は、適応するトルク管理工具を使ってください。
工具④:ウォーターポンププライヤー
構成例:KNIPEX(クニペックス)8701-250 コブラ ウォーターポンププライヤー
ロックナットの締め付けや、太い電線管(ねじなし電線管・PF管コネクタなど)の作業に使います。全長250mm、25段階の調整機構 つきで、パイプつかみ能力φ50mm、ナットつかみ能力46mmまで対応します(メーカー公開仕様)。
選定ポイント:メーカー公式カタログ(PDF)の「87 01 250」でつかみ能力・調整段数・ボックスジョイント構造を確認します。対象物の寸法や材質に合うかを確かめ、価格や耐久性の優劣をブランド名だけで判断しません。
工具⑤:スケール(コンベックス)
構成例:タジマ Gロック-25 5.5m(GL25-55BL)
ケーブルの寸法出し・ボックスの位置決めなどに使います。テープ幅25mm/長さ5.5m/JIS1級で、455mmピッチ表示・ストラップ・大型ベルトクリップ・爪飛び防止プロテクターを備えています(メーカー公式仕様)。同じシリーズでも仕様が異なるため、購入時は型番を確認してください。
選定ポイント:必要な測定距離、テープ幅、携帯方法を比較します。保護機構は落下後の正常動作を保証するものではありません。落とした場合は爪・テープ・本体の状態と測定への影響を確認し、メーカーの点検・使用中止条件に従います。
工具⑥:ニッパ
構成例:フジ矢 770-150(電工名人 強力ニッパ)
細い電線(制御線・信号線・心線の端末カットなど)の切断や、インシュロック(結束バンド)の余り処理に使います。ペンチより小回りが利くため、スイッチボックス内の細かい仕上げに向きます。
選定ポイント:メーカー製品情報で切断対象の材質・太さと能力を照合します。切れ味の持続期間や他製品との耐久性を実測した評価ではありません。
工具⑦:電工ハサミ
構成例:マーベル MMS-833RN(電工ハサミ R刃)
切断工具は、切る材料とメーカーが示す能力に合わせて選びます。MMS-833RNはR刃の電工ハサミで、全長185mm・質量165g・刃長45mmです(メーカー製品情報)。ハサミも刃物であり、工具の選択が高所作業の安全対策の代わりにはなりません。停電の確保・足場と姿勢の確保・必要な墜落制止用器具・保護具を優先してください。
工具⑧:検電器
構成例:長谷川電機 HTE-610(低圧交流専用検電器)
活線(電圧がかかっている状態。電流が流れていなくても活線)かどうかを確認するための安全工具です。作業前の死活確認に欠かせない 1 本 です。HTE-610 は低圧交流専用の検電器で、AC 50〜600V(50/60Hz)対応、被覆の上からでも反応し、感度調整つまみを備えます(メーカー公開仕様)。直流回路や高圧回路には使えませんので、扱う電路に合った定格の検電器を選んでください。被覆の上からの検電は感度や被覆厚の影響を受けるため、検電の方法は必ず使用する検電器の取扱説明書に従ってください。停電確認では、測定前後に既知の活線で検電器が正しく動作することを確認する手順(動作前後点検)を必ず入れます。
なお、絶縁抵抗の測定が必要な場面では検電器ではなくメガーを使います。詳しくはメガー(絶縁抵抗計)の使い方を参照してください。
機種の定格・用途はメーカーの検電器情報で確認してください。
補助工具⑨:ラジオペンチ・カッターナイフ
ラジオペンチ
狭い場所での電線の引き回しや、細かい端子の整形に使います。プライヤーと違い先端が細いので、スイッチボックス内や器具裏側の作業に向いています。樹脂グリップは滑りにくく握りやすいものですが、絶縁工具ではありません。心線に触れる作業は必ず停電・無電圧を確認してから行ってください。
カッターナイフ(養生用)
この構成例では、カッターナイフは養生テープ・段ボールなどの材料に適応する製品を選び、養生用に分けます。心線の被覆剥ぎには対象電線に適応する工具を使い、一般のカッターを代用しません。
業務に合わせて追加する工具の例
| 行う作業 | 携帯・準備を検討するもの |
|---|---|
| 切断・整形・ねじ締め | 適応するペンチ・ドライバー・切断工具 |
| 寸法出し・測定 | スケール、測定対象・安全等級に適合する測定器 |
| リングスリーブ接続 | スリーブ・電線の組合せに適合する専用圧着工具 |
| 特殊作業 | 施工要領に指定された専用工具 |
経験年数で工具の本数を決めるのではなく、その日の業務と安全要件で選びます。使わない工具まで腰に増やす必要はありません。
初めて揃えるときに検討する7本の例
以下は屋内配線の作業を想定した例です。購入順を一律に決めるものではなく、業務・器具の指定・職場の安全手順に照らして必要な工具を選びます。
| 項目 | 工具 | 用途 |
|---|---|---|
| 1 | 電工ナイフ | ケーブル外装剥きの基本 |
| 2 | ペンチ | 切断・つかむ・曲げる |
| 3 | プラスドライバー(No.2) | ビス締めで必須 |
| 4 | マイナスドライバー(6mm) | 同上 |
| 5 | 検電器 | 死活確認に欠かせない安全工具 |
| 6 | スケール | 寸法出し全般に必要 |
| 7 | プライヤー | ロックナット締め等で必要 |
この7本だけで全作業に対応できるわけではありません。リングスリーブで電線を接続する場合はリングスリーブ用の圧着工具が別途必要で、技能試験でも必携工具に挙げられています。作業内容に応じて圧着工具・VVFストリッパーなどを用意してください。
腰道具を揃えるときの注意点
購入価格だけで選ばない
価格だけでなく、次の条件を同じにして比較します。メーカーが公表していない寿命や、根拠のない買い替え回数・長期総額は示しません。
| 比較する項目 | 購入前に確認すること |
|---|---|
| 初期費用 | 必要な工具・収納・付属品を含めた総額 |
| 適合性 | 作業対象・線径・定格・安全等級 |
| 保守費用 | 交換部品の有無、修理・点検の方法と費用 |
| 交換判断 | メーカーの使用前点検・使用中止条件 |
手入れをしていても、摩耗・損傷・点検結果によっては修理や交換が必要です。
検電器やテスタでは、価格よりも用途・定格・メーカーが示す適合規格や安全等級(CAT区分など)を確認してください。規格の対象も機種によって異なります。たとえば IEC 61243-3 は二極式低圧検電器の規格なので、ペン型の非接触式検電器にそのまま当てはめることはできません。
自分の手のサイズと利き手に合わせる
ペンチやドライバーは、手袋を含めた握りやすさ、開き幅、必要な能力を確認します。手の大きさだけで工具サイズを決めず、可能なら工具店で確認してください。
図2は右利き/左利き別の配置例です。工具ごとの使用頻度は業務で変わるため、必ず左右反転させる必要はありません。実際の抜き差しや動作、保護具との干渉を確かめて配置してください。
腰道具スタイルが向いている人 / 向いていない人
向いている人
- 屋内配線・改修工事など、現場で動き回りながら工具を使う方
- 高所作業・狭所作業が多く、両手を空けて作業したい方
- 毎日同じ工具セットを使い続ける方(電気工事士・電気通信の設備工事に携わる方など)
向いていない人(工具箱中心で良い人)
- 据え置き作業が中心の方(盤組立・工場内作業など)
- 月に数回しか工具を使わないDIYユーザー
- 装備時に痛みや動作の支障がある方(いったん荷重を外し、携帯方法や作業条件を見直す)
まとめ
腰道具の構成例10項目をまとめると以下のとおりです。
- 電工ナイフ(デンサン DK-670F)
- ペンチ(フジ矢 1050-175)
- プラス・マイナスドライバー(ベッセル No.220)
- プライヤー(KNIPEX 8701-250 コブラ)
- スケール(タジマ Gロック-25 / GL25-55BL)
- ニッパ(フジ矢 770-150)
- 電工ハサミ(マーベル MMS-833RN)
- 検電器(長谷川電機 HTE-610)
- 補助工具:ラジオペンチ/カッターナイフ(養生用)
- 腰袋(ニックス KC-201D)
この一覧は購入・携帯を義務づけるものではありません。作業対象とメーカー仕様に合う工具を選び、ベルト・腰袋・保護具の適合と装備全体の重量を確認します。初めて揃える方は、7本の例も参考に必要なものから検討してください。
これから資格を取る方は第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セットや第二種電気工事士 学科試験対策、ケーブル処理の腕を磨きたい方はVVFケーブルの剥ぎ方 4つのテクニック、ストリッパー選びはVVFストリッパー比較もぜひあわせてご覧ください。
仕様はリンク先の該当型番で確認してください。価格は変動するため、購入時の販売店表示を確認してください。
よくある質問
- 腰道具一式を揃えるのにいくら必要ですか?
- 金額は選ぶメーカー・グレードで変わります。作業に必要な工具と収納用品を選び、購入時の販売価格を合算してください。本文の7本は構成例で、全員に共通する必須セットではありません。定格・能力・保守条件を確認して選びます。
- 腰道具と工具箱、どちらを優先すべき?
- 現場作業がメインなら腰道具優先です。工具箱は持ち運び中の保管・予備工具用と割り切るほうが効率的です。DIYや自宅作業がメインなら工具箱でも十分です。
- ニックスの腰袋は本当に10年使えますか?
- この記事では10年使えるという根拠を確認していないため、耐用年数は示しません。使用条件、取付部や生地の損傷、メーカーの点検・使用中止条件で判断してください。素材に合う手入れと修理の可否も、購入する型番について確認します。
- 検電器が反応しないときはどうすればいい?
- メーカーの案内では、使用前に①外観、②テストボタン(内部回路と電池)、③既知の電源や検電器チェッカーでの検電性能を確認します。電池を新しくしてもテストボタンで正常に動かない場合は、使うのをやめて販売店・メーカーに相談するか買い替えてください。検電器の不調は感電事故に直結するので、信頼性最優先で運用してください。
- 腰道具を持つと腰が痛くなります。対策は?
- 痛みが出る装備はいったん荷重を外し、工具の量・配置・携帯方法と作業条件を見直してください。ベルトやサスペンダーの適合・装着方法はメーカー指定に従います。特定のベルト幅や配置で腰痛が予防・改善するとは保証できません。痛みが続く場合は医療機関に相談してください。
- 左利きでも同じ腰道具で使えますか?
- 工具・ホルダーごとの左右の指定をメーカー仕様で確認してください。図2は配置例であり、左右反転を必須とするものではありません。利き手、使用頻度、抜き差し、保護具との干渉を確認して配置します。
- メーカーの違うベルトと腰袋を組み合わせてもよい?
- ベルト幅、取付金具、重量や装着方法の制限を各メーカーの案内で照合してください。取り付けられるだけで安全な組合せとは判断できません。適合を確認できない場合はメーカーに問い合わせ、確認できる組合せを選びます。