「2.0mmのVVFは何アンペアまで流せる?」「同じ管内に4本通したら、許容電流はどれくらい下がる?」
これらは住宅・店舗の屋内配線でよく出てくる判断です。間違えれば過熱・絶縁劣化・最悪は火災につながるため、内線規程(JEAC 8001)の許容電流は工事士なら暗記レベルで押さえておきたい数値です。
この記事では、第一種電気工事士が、IV単線・VVF/VVRの許容電流早見表、電流減少係数、周囲温度補正までを「現場で迷わない覚え方」と「第二種電気工事士の学科試験で問われる」の両軸で整理しました(許容電流計算や遮断器容量の選定は技能試験の欠陥判定項目ではなく、学科と実務の知識です)。図解付きの計算ドリル5問も収録しています。
電線の許容電流とは?30秒で押さえる基本
許容電流とは、電線に連続して流しても被覆が劣化しない最大の電流値のことです。電線に電流を流すと、銅心線の抵抗で発熱します。被覆(IVなら塩化ビニル、VVFなら塩ビ系シース)の許容温度(最高使用温度)が60℃に設定されているため、この上限を超えない電流値が内線規程・電技解釈で定められています。基準となる周囲温度は絶縁電線(IV)は30℃、**ケーブル(VVF等)のメーカー公表値は40℃**が一般的です。
許容電流に関わる主要な要素は次の3つです。
- 電線の太さ(断面積) — 太いほど許容電流は大きくなる
- 電線の本数(同一管内) — 本数が増えるほど放熱しにくく、減少係数で割り引く
- 周囲温度 — 30℃を超える環境では補正係数で減らす
【完全早見表】絶縁電線(IV)の許容電流(VVFは次節に別表)
| 導体太さ | 単線/より線 | 基底値(がいし引き) | 3本以下(×0.70) | 4本(×0.63) | 5〜6本(×0.56) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.6mm | 単線 | 27A | 19A | 17A | 15A |
| 2.0mm | 単線 | 35A | 24A | 22A | 19A |
| 2.6mm | 単線 | 48A | 33A | 30A | 27A |
| 2sq | より線 | 27A | 19A | 17A | 15A |
| 3.5sq | より線 | 37A | 26A | 23A | 20A |
| 5.5sq | より線 | 49A | 34A | 31A | 27A |
※基底値=がいし引き工事相当(周囲温度30℃、電技解釈第146条 表146-1)。同一管内の電線本数で減少係数(3本以下=0.70、4本=0.63、5〜6本=0.56)を乗じて使用。係数の根拠は本記事「電流減少係数」セクション参照(内線規程 JEAC 8001-2022)。掛け算後の端数は7捨8入(小数第1位が8以上は切り上げ、7以下は切り捨て)。
第二種電気工事士で頻出する代表サイズの値を、1枚の表で網羅しました。すべて周囲温度30℃・がいし引き工事相当(基底値)です。実際の管内配線では、これに電流減少係数を掛けて使います(後述)。
IV線(絶縁電線・単線)の許容電流
下表はいずれもがいし引き工事相当の基底値(周囲温度30℃)です。IV線を電線管・ダクトに収める場合は、この値に後述の電流減少係数を掛けて使います。
| 太さ | 直径 | 断面積 | 許容電流 |
|---|---|---|---|
| 1.6mm | 1.6mm | 約2.0mm² | 27A |
| 2.0mm | 2.0mm | 約3.1mm² | 35A |
| 2.6mm | 2.6mm | 約5.3mm² | 48A |
| 3.2mm | 3.2mm | 約8.0mm² | 62A |
IV線(絶縁電線・より線)の許容電流
低圧の幹線などで使われるサイズです(IVは600Vビニル絶縁電線なので、高圧回路には使えません。高圧は電圧・施設方法に適合する高圧用電線・ケーブルを別途選定します)。
| 公称断面積 | 許容電流 |
|---|---|
| 5.5mm² | 49A |
| 8mm² | 61A |
| 14mm² | 88A |
| 22mm² | 115A |
| 38mm² | 162A |
VVFケーブルの許容電流(基底値)
VVF(VV平形)は2心または3心が同一シース内に収まっているため、心線同士の発熱が逃げにくいぶん基底値が下がります。下表は電線ケーブル販売店の技術資料(wirecable-sales.com「VVFケーブル早見表」。富士電線工業の仕様書参照と注記あり)に掲載された代表値です。同資料も「メーカーによって値が若干異なる」と注記しており、特に3心側は 1.6mm=16A・2.6mm=28A とするメーカー資料もあります。採用する製品のメーカー表で確認してください。
| 太さ | 2心(2C) | 3心(3C) |
|---|---|---|
| 1.6mm | 18A | 15A |
| 2.0mm | 23A | 20A |
| 2.6mm | 32A | 27A |
※VVFの上表は電線メーカーが公表する気中布設・周囲温度40℃基準の代表値です。前掲のIV(がいし引き)早見表は電技解釈第146条の周囲温度30℃基準なので、同じ「基底値」でも基準温度が異なる点に注意してください。
VVR(丸形)は心数・サイズ・布設条件で値が変わるため、VVFと同等とは一律に言えません。採用する製品のメーカー仕様書で確認してください。キャブタイヤケーブル(VCT等)は構造・絶縁体が異なるため、内線規程の別表またはメーカー仕様書を参照してください。
VVFストリッパー P-958
第二種電気工事士技能試験の時短に役立つVVFストリッパー(受験案内の指定工具ではなく追加工具)。
- 1.6mm・2.0mm の心線剥き対応
- 3心線まで一度に剥ける
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
電流減少係数(同一管内本数)
複数本のIV線を同じ電線管・ダクトに入れると、互いの発熱が抜けにくくなるため、基底値に減少係数を掛けて使います。これは第二種電気工事士の筆記試験で頻出の最重要係数です。
| 同一管内の電線本数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5〜6本 | 0.56 |
| 7〜15本 | 0.49 |
| 16〜40本 | 0.43 |
| 41〜60本 | 0.39 |
| 61本以上 | 0.34 |

同一管内の電線本数と減少係数の対応:
- 3本以下 → ×0.70
- 4本 → ×0.63
- 5〜6本 → ×0.56
- 7〜15本 → ×0.49
- 16〜40本 → ×0.43
例:2.0mm IVを4本管内に入れる場合
35A × 0.63 = 22.05 → 22A
ブレーカーは22A以下のものを選定します。住宅用なら20Aブレーカーが妥当です。
周囲温度補正係数
倉庫・屋根裏・ボイラー室など周囲温度が30℃を超える環境では、許容電流をさらに減らす必要があります。筆記試験でも問われる計算です(出題範囲は各年度の試験センター公表資料で確認してください)。
| 周囲温度 | IV線(基底30℃)の補正係数 |
|---|---|
| 〜30℃ | 1.00 |
| 〜35℃ | 約 0.91 |
| 〜40℃ | 約 0.82 |
| 〜45℃ | 約 0.71 |
| 〜50℃ | 約 0.58 |
※許容温度60℃の絶縁電線(IV)における近似値。詳細は内線規程 JEAC 8001-2022 の温度補正係数表を参照。
計算ドリル5問(ステップ別解答付き)
許容電流の理解度を試す典型問題を5問用意しました。第二種電気工事士の筆記試験でよく見る形式です(筆者の見解)。
Q1(基本):1.6mm IVを3本同一管内に入れたときの許容電流は?
解答
基底値: 27A(1.6mm IV)
本数: 3本以下 → 係数 0.70
27 × 0.70 = 18.9 → 19A答:19A(端数は7捨8入)
Q2(標準):2.0mm IVを5本同一管内に入れたときの許容電流は?
解答
基底値: 35A(2.0mm IV)
本数: 5〜6本 → 係数 0.56
35 × 0.56 = 19.6 → 19A答:19A
Q3(VVF):VVF 2.0mm-2心の許容電流(基底)は?
解答
VVFは表で直接読み取ります。
答:23A
※IV単線35Aと混同しないこと。VVFは平形構造で発熱が逃げにくいため低めです。
Q4(応用):2.6mm IVを4本管内、周囲温度40℃のときの許容電流は?
解答
基底値: 48A(2.6mm IV、30℃)
本数: 4本 → 係数 0.63
温度: 40℃ → 係数 0.82
48 × 0.63 × 0.82 = 24.79 → 24A答:24A
Q5(練習問題):運転電流15Aの機器の専用回路に、1.25倍の余裕を見るとしたら配線は?
解答
連続的に流れる負荷では、電線の許容電流に余裕を持たせます(ここでは1.25倍で計算)。ただし「連続負荷は一律1.25倍」という一般則があるわけではありません。エアコンなど個別機器は、機器の施工説明書に示された電線サイズ・遮断器容量の指定が優先です。
必要許容電流: 15 × 1.25 = 18.75A 以上
候補1: VVF 1.6mm-2c(18A) → 18.75Aに満たず不足
候補2: VVF 2.0mm-2c(23A・気中布設の基底値) → 適切 ✅(電線管内・壁内など布設条件によってはこれより下がるため、最終判断はメーカーの布設条件別表で確認)答(この例題の前提で):VVF 2.0mm-2c
※これは「1.25倍の余裕を見る」という例題上の仮定で解いた練習問題です。1.25倍は電技解釈第149条が電動機等に関して定める条件で、すべての連続負荷に一律に適用される規則ではありません。実際のエアコン回路は、機種の据付工事説明書が指定する遮断器容量・電線サイズ・コンセントに従い、布設条件・電圧降下も含めて決めてください。
第二種電気工事士で必ず出る暗記ポイント
筆記試験でよく出るパターンを3つに整理します(出題頻度は筆者の見解)。候補問題13問の配線設計を理解するうえでも前提知識になります。
- IV単線の許容電流:1.6mm=27A、2.0mm=35A、2.6mm=48A(語呂:ニーナナ・サンゴ・ヨンパチ)
- 電流減少係数:3以下=0.70、4=0.63、5〜6=0.56(語呂:ナイ・ロク・ゴロ)
- VVFは表で直接読む:1.6×2c=18A、2.0×2c=23A、2.6×2c=32A
候補問題13問では直接「許容電流○A」を計算させる出題は少ないものの、配線設計の背景知識として理解しておくと、施工条件の意味がつかみやすくなります(技能試験で受験者が遮断器容量を選定することはありません)。技能試験対策の前段階で電気工事士試験 必携工具ガイドと合わせて読むと、知識が一気に立体化します。
現場で必須の関連工具
許容電流の判定を実務に落とし込むために、現場でよく使う4つの工具をまとめました。
絶縁抵抗計(メガー)— 配線後の絶縁チェック
許容電流以下で運用していても、絶縁劣化が進めば漏電・地絡します。竣工検査や点検で絶縁状態を確認する基本の測定器です(法定調査の方法・周期は設備区分で異なります)。詳細は絶縁抵抗計(メガー)の使い方で解説しています。
VVFストリッパー — VVFの剥ぎ作業
許容電流の早見表を覚えても、現場でVVFを正確に剥けないと意味がありません。HOZAN P-958はVVF 1.6mm/2.0mm の2心・3心に対応します(公式適応電線)。製品ごとの対応サイズと価格はVVFストリッパー徹底比較で比べられます。
リングスリーブ用圧着工具 — 接続部の信頼性
許容電流いっぱいで運用する回路ほど、接続不良による発熱が致命的になります。JIS C 9711 適合の圧着工具で確実に接続しましょう。あわせて、JIS C 2806 に適合するリングスリーブを電線の組み合わせに応じて選び、正しい圧着マークで圧着することが条件になります(工具だけでは決まりません)。工具の選び方はリングスリーブ用圧着ペンチおすすめ5選にまとめています。
低圧用検電器 — 活線の安全確認
配線に触れる作業の前には、検電器で停電(無電圧)を確認します(検電器の無反応だけで無電圧と断定せず、既知の活線で動作確認したうえで使います)。長谷川電機工業 HTE-610はAC50〜600V対応の音響発光式・低圧専用検電器です。AC/DC両用が要るかどうかや、絶縁手袋を着けたまま使えるかの注意点は低圧用検電器おすすめ4選で機種ごとに整理しています。
よくある質問
- VVF 1.6mm × 2心 と IV 1.6mm 単線で許容電流が違うのはなぜ?
- VVFは2本の心線が1つのシース内に収まっているため、互いの発熱が逃げにくく、IV単線(27A)よりも低い18Aに設定されています。同じ太さでもケーブル形態で許容電流が変わるのはこのためです。
- 電流減少係数の本数には接地線(緑線)も含まれますか?
- 接地線(PE)は通常電流が流れないため本数に含めません。一方、**中性線は回路方式によって扱いが変わります**。単相2線式では中性線にも負荷電流が流れるため算入します。単相3線式・三相4線式では、内線規程の減少係数表の備考で中性線を電線数に算入しない扱いが示されています(負荷の不平衡・高調波を考慮した設計上の検討は別途行います)。電技解釈 第146条は「同一管内の電線数」で係数を定めているため、回路方式・不平衡・高調波を踏まえて判断し、迷う場合は内線規程 JEAC 8001-2022 の該当条文・解説を参照してください。
- ブレーカー(過電流遮断器)の選定はどう連動させますか?
- ブレーカーの定格電流 ≦ 電線の許容電流 が基本です(例外として電技解釈第149条は、15A超20A以下の配線用遮断器に1.6mm を認めるなど回路区分ごとの規定を置いています)。例えば 2.0mm IV の3本管内なら 35×0.7=24.5A → 7捨8入で24A、これを下回る20Aブレーカーを選びます。連続使用機器がある場合は余裕を見ますが、倍率は一律ではありません。エアコン等は機器の施工説明書に示された電線サイズ・遮断器容量の指定に従ってください。
- 夏場の屋根裏配線で気をつけるポイントは?
- 屋根裏は夏場に40℃を超えることがあり、許容電流が大きく下がります。連続稼働するエアコン回路などは『本数係数 × 温度係数』の両方を掛けた値で再計算してください。安全側に振ってワンサイズ太い電線を選定することを筆者は勧めますです。
- 5.5mm²より線と2.6mm単線、どちらを優先すべき?
- 許容電流は 5.5mm²より線=49A、2.6mm単線=48Aでほぼ同等。施工性ではより線(曲げやすい・端末が安定)が優位、コスト・端末の単純さでは単線が優位です。動力幹線・電灯主回路などは5.5mm²より線、分岐は2.6mm単線がよく使われます。
まとめ:許容電流は「3つの係数の掛け算」で決まる
現場・試験で迷わないために、本記事の核を3行に圧縮しました。
- 基底値:IV単線は1.6=27A・2.0=35A・2.6=48A、VVFは表で直接読む
- 電流減少係数:3以下=0.70・4=0.63・5〜6=0.56(語呂「ナイ・ロク・ゴロ」)
- 周囲温度補正:30℃=1.00、40℃≒0.82、50℃≒0.58
この3つを掛け算すれば、許容電流の基本的な判断ができます(実務では電圧降下・短絡容量・機械的強度なども別途検討します)。第二種電気工事士の筆記対策としては、IV単線の値と減少係数3つ(0.70/0.63/0.56)まで覚えれば、この分野の出題の大半に対応できます。
技能試験の準備と並行して読みたい方は電気工事士試験 必携工具ガイド、配線後の絶縁チェックは絶縁抵抗計の使い方をどうぞ。