「普通のクランプメーターで漏れ電流を測ったら 0.0A のまま動かない」「漏電しているはずなのに数値が出ない」——これは故障ではありません。測定器の分解能が足りていないだけです。
漏れ電流はmA(ミリアンペア)単位、場合によってはμA単位の世界です。負荷電流用のクランプメーターは数A単位で読む設計なので、そもそも表示できません。ここを測るには**リーククランプ(漏れ電流クランプメータ)**という専用機が必要です。
この記事では、第一種電気工事士が、リーククランプの選び方を「この機能は要る/要らない」まで踏み込んで整理し、メーカー公式仕様で確認した4機種を比較します。
リーククランプと普通のクランプメーターの違い
どちらも「電線を挟んで電流を測る」点は同じですが、見ている電流の桁が違います。
| 項目 | リーククランプ | 一般のクランプメーター |
|---|---|---|
| 主な用途 | 漏れ電流の測定 | 負荷電流の測定 |
| 測れる最小単位(本記事の掲載機種) | 0.001〜0.1mA | 0.1A(KEW 2046R/2056R) |
| 最小レンジ | mA(ミリアンペア) | A(アンペア) |
| 挟み方 | その回路の活線導体をすべてまとめて挟む | 1本だけ挟む |
| 磁気シールド | 外来磁界対策が施されている(例:MODEL 2433R「外部磁界の影響が極めて少ない設計」) | 機種により異なる |
負荷電流側の選び方はクランプメーターおすすめ3選で詳しく解説しています。リーククランプは負荷電流も測れますが(本記事の4機種は200〜1000A)、負荷電流用クランプで漏れ電流は測れません。主用途に合わせて選んでください。
選び方①:分解能(どこまで細かく読めるか)
リーククランプ選びで最初に決めるのが、最小何mAまで読めるかです。
| 分解能 | 読める世界 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 0.1mA(100μA) | 1mA判定はできる | 大口径機・幹線の切り分け |
| 0.01mA(10μA) | 住宅・店舗の漏電切り分けの目安(筆者の見解) | 住宅・店舗の漏電切り分け |
| 0.001mA(1μA) | 微小な変化・経年比較 | 精密な原因究明・データ取り |
選び方②:クランプ口径
口径は「挟める電線の太さ」ではなく、挟む対象と場所で決まります。
漏れ電流測定では、その回路の活線導体をすべてまとめて挟む必要があります。つまり単相2線なら2本、単相3線なら3本、三相3線なら3本、三相4線なら中性線を含む4本を同時にくわえ込むことになるため、負荷電流測定より太い開口が要ります。
| 測定する場所 | 口径の参考例 |
|---|---|
| 住宅の分岐回路(VVF 1本ぶんをまとめて挟む) | φ24mm程度 |
| 分電盤の主幹・単相3線式の幹線 | φ40mm前後 |
| 動力幹線・キュービクル二次側 | φ68mm など大口径機 |
※数値は参考例です。実際にはケーブルの外径だけでなく、盤内でクランプの頭が入るスペースが効いてきます。太い幹線ほど、口径よりも「そもそも手が届くか」が制約になります。
選び方③:フィルタ(周波数切換)機能
ここがリーククランプ選びで最も誤解が多いポイントです。
クランプに表示される漏れ電流(Io)は、実は2つの成分のベクトル和です(単純な足し算ではなく位相を持つため、三相回路などでは Igr が Io を上回ることもあります)。
- Igr:絶縁が劣化して流れる電流。本当に知りたいのはこちら
- Igc:ケーブルや機器がもともと持つ対地静電容量を通って流れる電流。設備が健全でも流れる
インバーターエアコン・LED照明・パソコン電源などが多い設備では、Igc が大きくなりがちです。その結果、絶縁は健全なのに Io だけが大きく出て、「漏電している」と誤判定する事故が起きます。
選び方④:CAT区分 — ここが最大の落とし穴
負荷電流用のクランプメーターは CAT IV 600V 対応機が珍しくありませんが、本記事の4機種のうち3機種は CAT III 300V です。
これは測定器の格が低いという話ではなく、想定している測定場所が違うためです。とはいえ、使う側は必ず意識しなければいけません。
おすすめ4機種の比較
メーカー公式サイトで現行販売と仕様を確認したうえで、用途の異なる4機種を挙げます。
| 項目 | HIOKI CM4001 | 共立 MODEL 2433R | HIOKI CM4002 | 共立 KEW 2413R |
|---|---|---|---|---|
| 漏れ電流の最小レンジ/確度規定下限 | 確度規定 0.60mA〜 | 最小レンジ 40.00mA | 確度規定 0.060mA〜 | 最小レンジ 200.0mA |
| 最小分解能 | 0.01mA | 0.01mA | 0.001mA | 0.1mA |
| 負荷電流の最大 | 600A | 400A | 200A | 1000A |
| 最大導体径 | φ24mm | φ40mm | φ40mm | φ68mm |
| 真の実効値 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| フィルタ機能 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 安全規格 | CAT III 300V | CAT III 300V | CAT IV 300V / CAT III 600V | CAT III 300V |
| 質量 | 115g | 約270g | 400g | 約600g |
| 希望小売価格(税込) | メーカー非公表 | 41,800円 | メーカー非公表 | 63,800円 |
※仕様・価格は2026年9月4日にメーカー公式サイトで確認した値です。HIOKI 2機種は公式サイトに希望小売価格の記載がないため、実勢価格はリンク先でご確認ください。
① HIOKI CM4001 — 軽さと汎用性で選ぶなら
115gという圧倒的な軽さが最大の特徴です。腰道具に入れっぱなしにしても負担にならないため、「漏電調査のときだけ持ち出す」ではなく常時携行できるのが実務上の強みになります。
漏れ電流だけでなく負荷電流600Aまで測れるので、簡易な負荷確認なら1台で兼用できます。突入電流測定にも対応しており、ブレーカーが入れた瞬間に落ちるようなケースの切り分けにも使えます。
向いている人:住宅・店舗中心で、1台を持ち歩きたい方 注意点:口径φ24mmなので、単相3線式の主幹など太い部分は挟めないことがあります
② 共立 MODEL 2433R — 価格と機能のバランス型
φ40mm・0.01mA分解能・フィルタ機能という実務で必要な要素を押さえつつ、税込41,800円に収めた現実的な選択肢です。
高調波成分をカットした測定と、含めた測定を切り替えられるため、インバーター機器が多い現場でも判断材料が増えます。約270gと取り回しもよく、最初の1台として選びやすい位置づけです。
向いている人:はじめてリーククランプを買う方、分電盤の主幹まで測りたい方 注意点:CAT III 300V なので、引込口まわりの測定には使えません
リーククランプメータ MODEL 2433R
φ40mm・0.01mA分解能・フィルタ機能という実務で必要な要素を押さえたバランス型リーククランプ。高調波成分をカットした測定と含めた測定を切り替えられる。
- 漏れ電流 40.00/400.0mA・負荷電流 400.0A の3レンジ
- 最小分解能 0.01mA
- 真の実効値(True RMS)測定 ※ひずみ波・サイリスタ波形に対応
- フィルタ機能(高調波成分のカット/取り込みを切替)
- 最大導体径 φ40mm/本体質量 約270g(電池含む)
- 安全規格 IEC 61010-1 CAT III 300V 汚染度2
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
③ HIOKI CM4002 — 感度と安全規格を両立させたい人へ
0.001mA(1μA)分解能で、確度が規定される範囲が 0.060mA からという高感度機です。微小な漏れ電流の変化を追ったり、経年比較のデータを取ったりする用途で効いてきます。
さらに、この4機種の中で唯一 CAT IV 300V / CAT III 600V を備えています。測定できる場所の自由度が高く、CAT区分の制約で困りにくいのが実務上の安心材料です。
向いている人:精密に原因を追いたい方、測定場所の制約を減らしたい方 注意点:400gと重めで、負荷電流は200Aまでです
④ 共立 KEW 2413R — 大口径が必要な現場向け
φ68mmという大口径と、負荷電流1000A対応を兼ね備えたモデルです。動力幹線やキュービクル二次側など、太いケーブルをまとめて挟む必要がある場面ではこのクラスが必要になります。
高調波の影響を除去できる周波数切換機能も備えています。約600gと重量はありますが、そもそも他機種では物理的に挟めない場所を測るための機種です。
向いている人:ビル・工場の幹線を扱う方、キュービクルの点検をする方 注意点:分解能は0.1mAなので、微小な漏れ電流の精査には向きません
漏れ電流の正しい測り方
手順
- 測定レンジを合わせる — オートレンジ機はそのまま。手動なら測定電流を超えないレンジ(不明なら大きいレンジ)から始め、必要に応じて下げる(取扱説明書の指示)
- その回路の活線導体をすべて挟む — 単相2線なら2本、単相3線なら3本、三相3線なら3本、三相4線なら中性線を含む4本
- 接地線(PE)は挟まない — 挟むと漏れた電流の戻り分まで数えてしまい、値が打ち消されます
- クランプをしっかり閉じる — 隙間があると外来磁界を拾います
- フィルタON/OFFを見比べる — 差が大きければ高調波成分が多い設備だと分かります
使用時の注意
- 絶縁被覆の上から挟む — 機種によっては定格の範囲内で裸導体の測定を認めていますが、本記事では被覆の上から挟むことを勧めます
- 測定前に検電する — 対象が活線かどうかを、対象回路とCAT定格に適合した検電器で確認します。検電器は使用前後に既知の活線で動作確認してください
- CAT区分と対地電圧を超える場所で使わない — 前述のとおり CAT III 300V 機は測定場所が限られます
- 他回路の影響を避ける — 分電盤内では電線が密集しています。可能なら測定対象を盤から少し引き出し、クランプの中心に置いてください
- 落下に注意する — 高感度な測定器なので、落とした後は測定値の信頼性が下がります
よくある質問
- 普通のクランプメーターでは漏れ電流を測れませんか?
- 実務上は測れないと考えてください。漏れ電流は数mA〜数十mAの世界ですが、一般のクランプメーター(例:KEW 2046R/2056R は分解能0.1A)では桁が足りず、表示が動かないか最下位桁がふらつくだけになります。また、リーククランプには外来磁界の影響を抑える磁気シールドが入っており、電線が密集した分電盤内での測定精度が違います。
- 漏れ電流が1mAを超えていたら絶縁不良ですか?
- それだけでは断定できません。クランプが表示するのは零相電流(Io)で、絶縁劣化ぶん(Igr)と、設備がもともと持つ対地静電容量ぶん(Igc)のベクトル和です。インバーター機器やLED照明が多い設備ではIgcだけで大きな値が出ることがあります。回路を切り分けて原因箇所を絞り込み、最終的には絶縁抵抗測定と併用して判断してください。
- フィルタ機能をONにすれば絶縁劣化ぶんだけ測れますか?
- 測れません。フィルタは高い周波数成分を減衰させる低域通過フィルタで、周波数で切り分けているだけです。商用周波数の対地静電容量ぶんは残ります。絶縁劣化ぶん(Ior)を直接測りたい場合は、Ior測定に対応した機種や絶縁監視装置が必要です。
- 接地線も一緒に挟んではいけないのはなぜですか?
- 漏れた電流は接地線を通って戻ってくるためです。接地線まで挟むと、行った分と戻った分の両方を数えることになり、打ち消し合って値が0に近づきます。挟むのはその回路の活線導体だけ(単相2線なら2本、単相3線なら3本、三相3線なら3本)にしてください。
- リーククランプのCAT区分が低いのはなぜですか?
- 格が低いのではなく、想定している測定場所が違うためです。リーククランプは分電盤や固定配線での使用を前提にした CAT III 300V の機種が中心で(本記事の4機種中3機種)、引込口・電力量計まわり(CAT IVの領域)や対地電圧300V超の回路では使えません。より広い場所で使いたい場合は、CAT IV 300V/CAT III 600V の HIOKI CM4002 のような機種を選んでください。
まとめ
リーククランプ選びは、次の4点を順に決めるだけで絞り込めます。
- 分解能 — 住宅・店舗の切り分けなら 0.01mA(10μA)が筆者の目安、微小な変化まで追うなら 1μA級
- 口径 — 活線導体をすべてまとめて挟むため、負荷電流測定より太い開口が要る
- フィルタ機能 — インバーター機器が多い現場では判断の助けになる。ただし絶縁劣化ぶんだけを取り出す機能ではない
- CAT区分と対地電圧 — 本記事の4機種中3機種が CAT III 300V。測る場所と対地電圧が計器の定格に適合しているか必ず確認する
そして最も大切なのは、表示された値だけで漏電と断定しないことです。零相電流には健全な設備でも流れる成分が含まれます。切り分けと(可能なら)絶縁抵抗測定を組み合わせて、はじめて原因にたどり着けます。
負荷電流側の選び方はクランプメーターおすすめ3選、絶縁抵抗の測り方と判定基準は絶縁抵抗計(メガー)の使い方、作業前の安全確認は低圧用検電器の選び方をあわせてご覧ください。