「圧着ペンチを間違えて技能試験で欠陥になった」「現場で使えない圧着工具を買ってしまった」「○・小・中の刻印がうまく出ない」

こうした悩みの原因になりやすいのが、リングスリーブ用ではない圧着工具の選択です(筆者の見解)。リングスリーブ用の圧着ペンチは黄色のグリップと専用ダイスを備えるのが一般的で、ホームセンターで売られている裸圧着端子用の汎用工具では試験に対応できません。

本記事では、第一種電気工事士が、リングスリーブ用圧着ペンチの選び方とおすすめ5機種を比較紹介します。HOZAN・ロブテックス・ツノダ・マーベルの4ブランドを横並びで見ていきます。

リングスリーブ圧着ペンチとは?普通の圧着工具との違い

リングスリーブ用圧着ペンチは、屋内配線で電線同士を接続するリングスリーブ(E形)を圧着するための専用工具です。ジョイントボックス内での電線接続に使われ、第二種・第一種電気工事士の技能試験でも必携工具となっています。

ホームセンターで「圧着工具」として売られている赤グリップや青グリップの工具とは、用途も規格もダイス形状も全く異なります。

項目リングスリーブ用圧着ペンチ裸圧着端子・スリーブ用圧着工具
グリップ色黄色(JIS C 9711 で規定)黄色以外(用途により異なる)
対応スリーブリングスリーブE形(小・中・大)R形・B形などの裸端子・スリーブ
ダイス形状○・小・中・大の刻印が押される楕円・凹型・六角型など
主な用途屋内配線のジョイントボックス内接続圧着端子の取付け・配電盤
試験適合第二種・第一種技能試験で必須試験では使えない

リングスリーブ圧着ペンチを「圧着完了」させると、スリーブに ○ / 小 / 中 / 大 という凸刻印が打刻されます。公式の欠陥判断基準では、圧着マークが不適正・欠けている・明確に見えないものが欠陥です(刻印が多少薄くても○・小・中を識別できれば、メーカーは問題ないとしています)。

技能試験の受験準備で工具一式を揃える方は、第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セットをご覧ください。ジョイント方法の比較はリングスリーブ vs 差込形コネクタ、関連の電線知識は電線の許容電流ガイドもあわせてどうぞ。

JIS C 9711 適合と「黄色グリップ」の意味(試験で欠陥にしないために重要)

JIS C 9711「屋内配線用電線接続工具」は日本産業規格で、リングスリーブ用圧着工具の構造・性能・寸法を定めています。電気工事士技能試験の指定工具では、**「JIS C 9711:1982/1990/1997 に適合するリングスリーブ用圧着工具」**を使うこととされています(最新版は1997年版)。

そして JIS C 9711 適合品の最大の識別ポイントが**「黄色グリップ」**です。

具体的には、グリップが黄色+ダイスに ○・小・中(・大) の刻印 がある工具を選んでください。ただし外観は手掛かりにすぎず、適合はメーカー仕様・本体の JIS 表示で確認してください。

購入時は「JIS C 9711 適合」と明記されたカタログ表記・本体刻印を確認してください。

リングスリーブ圧着ペンチの選び方 — 6つのチェックポイント

① JIS C 9711 適合(黄色グリップ・必須条件)

繰り返しになりますが、黄色グリップ以外は選ばないでください。Amazon や楽天で「JIS準拠」「JIS規格相当」とだけ書かれた海外製の安価品が出回っていますが、技能試験ではメーカーカタログに『JIS C 9711 適合』と明記された国産大手品を使うのが無難です。

② 対応スリーブサイズ(○・小・中の3サイズ/大も対応する4サイズ)

リングスリーブE形のサイズは小・中・大の3種類ですが、圧着痕(刻印)は ○ / 小 / 中 / 大 の4種類あります。小スリーブだけは、電線の組み合わせによって「○」と「小」に刻印が分かれるためです(「○」になるのは 1.6mm×2本、1.6mm×1本+0.75mm²×1本、1.6mm×2本+0.75mm²×1本。試験センター「技能試験の概要と注意すべきポイント」(2026年版) のリングスリーブ表)。工具の「3サイズ対応/4サイズ対応」は、この刻印(ダイス)の数を指します。

  • 3サイズ対応(○・小・中): HOZAN P-738、ロブテックス AK17MA2、ツノダ TP-RS、マーベル MH-7S
  • 4サイズ対応(○・小・中・大): HOZAN P-77、ロブテックス AK17A、ツノダ TP-R

第二種電気工事士の候補問題では、令和8年度まで「大」スリーブを使う組み合わせは見当たりません。ただし試験センターの試験センター「技能試験の概要と注意すべきポイント」(2026年版)は、圧着工具について**「○、小、中、大の刻印が明確にでるものを用意してください」**と案内しています。公式の案内どおりに準備するなら4サイズ対応(P-77 など)、候補問題の範囲だけで考えるなら3サイズ対応でも作業はできる、という関係です。現場で「大」を使うかは、施工する電線の組み合わせ次第です。

なお、HOZAN の小・中対応コンパクトモデル P-737 は2022年7月に在庫終了となり、現行品は対応サイズが同じ P-738(全長202mm・290g。P-737 は195mm・300g)に置き換わっています。古いブログ記事や工具セットに P-737 の名前が残っていることがありますが、新規購入は P-738 を選んでください。

候補問題ごとの圧着パターンは第二種電気工事士 技能試験 候補問題13問の対策で全問解説しています。

③ 全長(試験は短め推奨/現場は長めもOK)

リングスリーブ圧着ペンチの全長は、メーカー・モデルにより 181mm〜286mm と幅があります。

  • 試験向き(180〜205mm): マーベル MH-7S(181mm)、ロブテックス AK17MA2(195mm)、HOZAN P-738(202mm)
  • 現場向き(250〜290mm): ツノダ TP-R(254mm)、ロブテックス AK17A(277mm)、HOZAN P-77(286mm)

技能試験は40分という時間制限がありますが、短さだけで選ばず、公式案内の対応刻印を先に確認してください。握りやすさは全長だけで決まらないため、実物のハンドルの開きと、使用するスリーブでの操作も確認しましょう。本記事では必要な握力や作業時間を実測比較していません。

全長の比率:同じ縮尺で比較HOZAN P-77286mmHOZAN P-738202mmマーベル MH-7S181mm操作感・圧着能力は全長だけでは判断できません。
図C: 公表全長の比率比較(形状や実寸を示す図ではありません)

④ グリップ・ラチェット機構(成形確認機構の有無)

最近の主要メーカー機種には**「成形確認機構(圧着ミス防止機構)」**が搭載されています。これは「圧着が完了するまでハンドルが戻らない」ラチェット式のロック機構で、最後まで握り込まないとダイスが開かない仕組みです。

  • メリット: 圧着不足を確実に防げる/試験でも安心
  • 注意点: 一度握り込んだら最後まで握り切る必要がある(途中で抜けない)

「成形確認機構付き」と書かれたモデルを選んでください。本記事の5機種はいずれも搭載しています。

⑤ 圧着痕(○・小・中・大)の刻印が確実に出るか

圧着完了後、リングスリーブの側面に刻印が浮き上がるのが正しい圧着の証です。刻印が欠けている・不適正・識別できないと、試験では欠陥と判定されます。

JIS C 9711 適合の国産メーカー品なら正しい握り方で刻印は安定して出る設計ですが、ダイスの摩耗や汚れで刻印が薄くなることもあります。清掃・点検の方法はメーカーの取扱説明書に従ってください(ロブテックスは圧着性能の確認のため年1〜2回の定期点検を案内しています)。

⑥ 価格と耐久性のバランス

価格はモデルによって幅があります。メーカー標準価格が確認できたものは各機種の項に記載しています(未記載の機種は公式サイトで確認)。実勢価格はリンク先で確認してください。

  • 試験用(軽さ・扱いやすさ重視): HOZAN P-738/マーベル MH-7S
  • 現場用(毎日使う): ツノダ TP-R/ロブテックス AK17A/HOZAN P-77 の4サイズ対応モデル

「大」を使う可能性があるなら、最初から4サイズ対応モデルを選ぶと買い替えが要りません(筆者の見解)。

用途別おすすめ:リングスリーブ圧着ペンチ5本

順位は付けていません。メーカー公式の仕様(対応スリーブ・質量・JIS適合)と用途から筆者が選んだ5本を、「どんな人に向くか」で分けて紹介します(販売実績や第三者調査にもとづく序列ではありません)。

メーカー公式仕様・取扱説明書・JIS適合表示・流通状況をふまえた5機種の比較です。

対応サイズと全長・質量の早見表小中用HOZAN P-738小・中対応/202mm・290g大対応HOZAN P-77大サイズまで対応・フルサイズ286mm現場用ロブテックス AK17A大サイズ対応・現場向き日本製ツノダ TP-R日本製・圧着ミス防止ハンドル小中用マーベル MH-7S小・中対応/181mm・250g価格は各機種の項(メーカー標準価格)と販売店で確認試験の持参工具は当該年度の公式案内を優先
図1: 用途別おすすめ早見表

主要5機種スペック比較表

項目HOZAN P-738HOZAN P-77ロブテックス AK17Aツノダ TP-Rマーベル MH-7S
対応サイズ○・小・中○・小・中・大○・小・中・大○・小・中・大○・小・中
全長202mm286mm277mm254mm181mm
重量290g430g460g430g250g
成形確認機構ありありありあり(圧着ミス防止H)あり
グリップ色黄色黄色黄色黄色黄色
JIS C 9711 適合◯◯◯◯◯
製造国日本日本日本日本(燕三条)公式で確認できず
対応範囲での使い分け小・中の練習・現場小・中・大の試験・現場小・中・大の試験・現場小・中・大の試験・現場小・中の練習・現場
標準価格(メーカー公表・税別)──¥7,020¥7,250─

※重量・全長はメーカー公表値です。「対応範囲での使い分け」は対応サイズをもとにした本記事の選び方で、試験への持参は試験センターの当該年度の案内を優先します。AK17Aの価格はメーカー表記の「参考価格」(税別)、TP-Rは「本体価格」で、販売価格とは異なります。

比較表の出典と、操作・点検の資料

機種メーカー製品情報操作・点検で参照する資料
HOZAN P-738製品情報(202mm・290g、小・中)取扱説明書PDF。開けない場合は製品ページのサポート欄から確認
HOZAN P-77製品情報(286mm・430g、小・中・大)取扱説明書PDFの電線組合せ表・刻印・点検注意
ロブテックス AK17A製品情報(277mm・460g、小・中・大)取扱説明書PDFの電線組合せ・定期点検
ツノダ TP-R製品情報・特徴(254mm・430g、小・中・大)成形確認機構・ストラップ穴の説明を参照。操作は付属の取扱説明書を確認
マーベル MH-7Sメーカー製品情報(181mm・250g、小・中)製品ページの「圧着工具使用上の注意」。操作は付属の取扱説明書を確認

2026年10月30日に主要な比較値と出典を点検しました。公開取扱説明書を一律に確認できたわけではないため、機種固有の操作を他機種へ流用しないでください。小・中対応の機種で「大」を圧着することはできません。

小・中をコンパクトに扱うなら:HOZAN P-738

HOZANの技能試験用工具セット「DK-28」に採用されているモデルで、試験対策セットから入る方が最初に手にする圧着工具のひとつです。

P-738 は HOZAN の小・中専用コンパクトモデルの現行品で、全長202mm・重量290gとミニサイズに設計されています(同系統の旧モデル P-737 は2022年7月に在庫終了となり、P-738 が後継として流通)。○・小・中の3サイズに対応し、第二種候補問題13問はすべてカバーします。ハンドル力が軽めに設計されているので、握力に自信がない方でも扱いやすい設計です。

成形確認機構(圧着ミス防止)付きで、完了まで握り込むと成形確認機構が解除される設計。完了が分かりやすい設計です。

気になる点: 「大」サイズ非対応です。第一種電気工事士の技能試験の受験案内は「○・小・中・大の刻印が明確にできるもの」を用意するよう求めているため、第一種を受けるなら大対応モデルを用意してください。

こんな人におすすめ: 第二種電気工事士の受験者・住宅工事メインの方・コンパクトな工具を好む方

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HOZAN P-738

リングスリーブ用圧着工具 P-738

コンパクト設計のリングスリーブ用圧着工具。JIS C 9711 適合品。

  • 小・中サイズ対応
  • コンパクト型で取り回し良好
  • JIS C 9711 適合

※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。

大スリーブまで1本で済ませたいなら:HOZAN P-77(フルサイズ)

P-738 と並ぶ HOZAN の フルサイズ系統の現行品。全長286mm・重量430gで、対応サイズは ○・小・中・大まで。P-738 が小中専用なのに対し、P-77 は大スリーブ(取扱説明書の同一線径の例:1.6mm×7本・2.0mm×5本・2.6mm×3本)まで対応するため、第二種試験のあとに第一種・現場仕事まで見据える人に向いています。

ハンドル長が長い分、少ない握力で圧着できるのが特徴(メーカー説明)。HOZAN工具セット DK-29 にも採用されており、「試験+現場兼用」として位置付けられているモデルです。合格後も現場で使い続けられる4サイズ対応です。

技能試験対策の前提知識は第二種電気工事士 学科試験対策、副読教材として複線図の書き方もあわせてどうぞ。

気になる点: 全長286mmでP-738より大きいため、保管場所と実物のハンドル操作を確認してください。試験センターが案内する○・小・中・大の刻印に対応する候補です。

こんな人におすすめ: 第二種試験から現場仕事まで1本で揃えたい方・握力に自信がない方・第一種電気工事士も視野に入れている方

第一種・現場で大サイズを扱うなら:ロブテックス AK17A

ロブテックス(ブランド名:エビ印/LOBSTER)は、大阪の工具メーカーで、圧着工具やリベッターを手がけるメーカーです。AK17A は**○・小・中・大の4サイズ全対応**のフルスペック圧着工具で、第一種電気工事士の試験や、太い電線を扱う動力工事の現場で活躍する一本です。

全長277mm・重量460g(メーカー標準価格 ¥7,020 税別)としっかりした作りで、成形確認機構を本体に内蔵し、ハンドルの開き幅が抑えられているため端子の仮押えが片手でしやすい設計。メーカーは年1〜2回の定期点検を推奨しています。大スリーブ(2.0mm×5本、5.5mm²×3本など)も無理なく圧着できるテコ比とハンドル長を確保しています。

JIS C 9711 適合の証である黄色グリップを採用し、本体には成形確認機構が内蔵。圧着完了までダイスが開かないので、試験・現場どちらでもミスを防げます。

気になる点: 全長277mm とやや大きいので、腰道具に常用するには場所を取ります。試験のみが目的の方には P-738 や AK17MA2 のミニ型の方が扱いやすいです。

こんな人におすすめ: 第一種電気工事士の受験者・現場プロ・大スリーブを扱う方

日本製・落下防止コード対応を重視するなら:ツノダ TP-R

ツノダ(TSUNODA/TTC)は新潟県燕三条の工具メーカー。日本製の工具を手がけるメーカーです。

TP-R は**○・小・中・大の4サイズ対応**で、ロブテックス AK17A と同じスペック帯。全長254mm・重量430g(メーカー標準価格 ¥7,250 税別)と AK17A よりわずかにコンパクト。材質は機械構造用合金鋼で、頭部硬度42〜46HRC・ハンドル部硬度46〜49HRC、圧着が完了しないとハンドルが開かないトグル機構を採用しています。

ツノダ独自の特徴として、両面カラーマーカー(ダイスのサイズが両側から色で見える)、エラストマーグリップ(滑りにくい樹脂)、落下防止コード用の穴などが標準装備。圧着ミス防止ハンドルは、圧着が完了しないとハンドルが開かない構造(メーカー説明では「トグル機構」)です。

気になる点: 販売店によって在庫が変動します。購入時に在庫と価格を確認してください。

こんな人におすすめ: 日本製・燕三条の品質にこだわる方・落下防止コードを使う高所作業の方

軽さを最優先するなら:マーベル MH-7S(ミニ型)

マーベル(MARVEL)は大阪の電設工具専門ブランドで、電設工具を幅広くラインアップしています。MH-7S は全長181mm・重量250gという本記事の5機種で最も軽量・コンパクトなリングスリーブ圧着工具です。

○・小・中の3サイズ対応で、第二種電気工事士技能試験向けの必携工具として案内されています。本体に成形確認機構を内蔵し、仮押え機能でリングスリーブを片手でセットしやすい設計です。

JIS C 9711 適合品で、グリップは黄色。軽さを優先したい方向けです。

気になる点: 「大」に非対応のため、大スリーブの圧着が必要な課題・現場には使えません。販売店によって在庫が変動します。

こんな人におすすめ: 小・中の範囲で工具の軽量化を進めたい方。「大」の作業や試験の持参工具の案内に合わせる場合は4サイズ対応機を比較してください

試験で「○」「小」「中」「大」を間違えないコツ

技能試験で筆者が特に注意しているのが「圧着マークの間違い」です。リングスリーブのサイズと電線本数の組み合わせは候補問題ごとに決まっており、組み合わせを間違えると、その1か所だけで欠陥=不合格になります。

電線本数×太さスリーブ刻印圧着位置(ダイス)
1.6mm × 2本小○○マーク位置
1.6mm × 3〜4本小小小マーク位置
2.0mm × 2本小小小マーク位置
2.0mm×1本+1.6mm×1〜2本小小小マーク位置
1.6mm × 5〜6本中中中マーク位置
2.0mm × 3〜4本中中中マーク位置

※令和8年度までの第二種候補問題に「大」を使う組み合わせは見当たらないが、試験センターは○・小・中・大の刻印が明確にでる工具の用意を案内している

判定員は圧着痕の刻印を必ずチェックするので、複線図を書く段階で「電線サイズ・本数 → スリーブサイズ → 圧着マーク」を確実に決めておくことが重要です。複線図の書き方は複線図の書き方で詳しく解説しています。

黄色グリップ○○小小中中大大マークスリーブをここに挟むリングスリーブ(断面イメージ)圧着工具の刃口(ダイス)使用する工具・スリーブの組合せ表と刻印を照合。試験では当該年度の受験案内・施工条件を優先します。
図B: ダイス表示の概念図(工具の実際の刃口形状・位置とは異なります)

圧着不良のサイン・NGパターン

圧着が正しくできていないと、技能試験では欠陥扱い、現場では接続部の発熱・火災事故につながる恐れがあります。以下のサインが出たら必ずやり直してください。

  • 刻印(○・小・中)が識別できない/出ていない → 握り込みが不足、または間違ったダイス
  • スリーブ上端から心線が5mm以上出ている → 圧着後に1〜3mm残して切り落とす(欠陥基準は上端から5mm以上の露出)
  • スリーブを上から見て、心線の先端が1本でも見えない → 欠陥(公式基準)。電線の差し込み不足
  • 1つのスリーブに圧着マークが2つ以上ある → 欠陥(公式基準)。同じ位置で握り直すのではなく、やり直すならスリーブごと交換

技能試験の欠陥判定基準では、「圧着マークの誤り」「圧着の漏れ」「リングスリーブの破損」はいずれも欠陥とされ、ひとつでもあると不合格です(2017年度以降、重大欠陥/軽欠陥の区分は廃止され「欠陥が1つでもあれば不合格」に統一されています)。

接続方式の比較として、リングスリーブの代わりに使える差込形コネクタとの違いはリングスリーブ vs 差込形コネクタで詳しく解説しています。

メンテナンスと寿命

長く使うためのメンテナンスは以下のとおりです(周期・方法は機種の取扱説明書が優先)。

  1. 使用後はダイス部の銅粉を清掃: 清掃方法は取扱説明書に従う(精度に関わる部位のため自己流で削らない)
  2. 可動部への注油: 周期・油種は機種の取扱説明書に従う(例:HOZAN P-738 は使用後にピン・摺動部へ注油)
  3. 保管は乾燥した場所: 結露・サビは精度低下の最大の敵
  4. 落下注意: 高所作業ではコード固定(ツノダ TP-R は穴あり)

ダイスの摩耗や圧着圧力はメーカーの点検・修理で確認できます。技能試験前には、実際にリングスリーブを圧着して刻印が正しく出るかを必ずテストしてください。

まとめ

リングスリーブ用圧着ペンチの選び方とおすすめ5機種をまとめます。

  • 圧着工具はJIS C 9711 適合(黄色グリップ)から選ぶ
  • 試験センターの工具の案内に合わせるなら P-77/AK17A/TP-R(○・小・中・大に対応)
  • P-738/MH-7Sは小・中を扱うコンパクトな選択肢。「大」には非対応
  • 第一種試験・現場プロなら ロブテックス AK17A または ツノダ TP-R(4サイズ対応)
  • 全モデル成形確認機構付きで圧着ミスを防げる
  • 圧着マーク(○・小・中・大)の使い分けは候補問題13問で必ず暗記
  • 試験前には必ず実圧着テストで刻印が正しく出るか確認

圧着ペンチは**「黄色グリップ」のJIS C 9711 適合品から選べば、本記事の5機種はいずれも JIS C 9711 適合品です。価格よりも自分の用途(試験のみ/現場込み)と握りやすさ**で決めてください。

購入時は型番・仕様・販売価格を再確認してください。電気工事士法はe-Gov 法令検索、JIS C 9711 の規格情報は日本規格協会 JIS C 9711:1997(規格本文は有料)を参照してください。

技能試験全体の準備は第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セット、候補問題は第二種電気工事士 技能試験 候補問題13問の対策、ジョイント方法の比較はリングスリーブ vs 差込形コネクタ、関連の電線知識は電線の許容電流ガイドで解説していますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

リングスリーブ用と裸圧着端子用の圧着工具は何が違いますか?
ダイス形状とJIS規格が違います。リングスリーブ用はJIS C 9711 適合で黄色グリップ、ダイスは○・小・中・大の凸刻印を打つ形状です。裸圧着端子用や絶縁被覆付端子用などは別の工具で、JIS C 9711 はそれらに黄色や紛らわしい色を付けないよう定めています。両者は互換性がなく、リングスリーブ用(黄色グリップ)以外で圧着すると正しい刻印が出ないため、技能試験では欠陥と判定され不合格になります(2017年度から「欠陥が1つでもあれば不合格」に統一)。
第二種電気工事士の技能試験には『大』サイズ対応の圧着工具が必要ですか?
令和8年度までの第二種候補問題に「大」スリーブを使う組み合わせは見当たらず、○・小・中の3サイズ対応モデル(HOZAN P-738【現行・旧P-737の後継】、マーベル MH-7S、ロブテックス AK17MA2 など)でも作業はできます。ただし試験センターの「技能試験の概要と注意すべきポイント(2026年版)」は**○・小・中・大の刻印が明確にでる工具を用意する**よう案内しています。公式の案内どおりに準備するなら大対応モデル(P-77 など)を選んでください。大を扱う場合は、○・小・中・大の4サイズ対応モデル(HOZAN P-77、ロブテックス AK17A、ツノダ TP-R)を選んでください。
通販で『JIS準拠』『JIS規格相当』と表記された安価な圧着工具は試験で使えますか?
おすすめできません。『JIS準拠』『JIS規格相当』という表記はメーカー独自の自称で、正式なJIS適合認証ではないケースが見られます。技能試験会場では工具自体の検査はありませんが、圧着痕(刻印)の精度が低いと欠陥扱いになるリスクがあります。HOZAN・ロブテックス・ツノダ・マーベルなど、メーカーカタログに『JIS C 9711 適合』と明記された国産品を選ぶのが無難です。価格差は各メーカーの公式価格で確認できる範囲で、合格保険としては小さな負担です。
圧着ペンチを買い替えるタイミングはいつですか?
以下のサインが出たら買い替えを検討してください。①圧着痕(刻印)が識別しにくくなった、②ハンドルがスムーズに動かない・引っかかる、③ダイスにヒビ・欠けがある、④ロック機構(成形確認機構)が効かなくなった、⑤落下後に動作が不安定。国産メーカー品でも、使用頻度が高いほど摩耗は早く進みます。試験前には必ず動作確認をしてください。
電動圧着工具(バッテリー式)はリングスリーブにも使えますか?
対応モデルなら使えますが、技能試験では電動工具の使用は禁止されています。一部の工具メーカーからリングスリーブ対応の電動圧着工具が出ており、現場プロが太い電線を大量に圧着する際に使われますが、住宅工事や試験では手動の圧着ペンチで十分です。電動はビル・工場の動力工事や、握力補助としての位置付けです。
圧着工具は試験合格後も現場で使えますか?
使えます。HOZAN P-738(2022年7月に在庫終了した旧P-737の後継・現行品)、HOZAN P-77、ロブテックス AK17A、ツノダ TP-R、マーベル MH-7S はいずれも JIS C 9711 適合のリングスリーブ用圧着工具で、住宅工事・店舗工事の屋内配線にも使えます。第一種電気工事士の試験や現場で『大』スリーブを扱うなら、最初から P-77 / AK17A / TP-R など4サイズ対応モデルを選んでおくと買い替え不要です。