「電工ナイフって普通のカッターナイフと何が違うの?」「どれを選べばいいかわからない」
そんな疑問を持っている方に向けて、第一種電気工事士の筆者が現場目線で電工ナイフの選び方と使い方を解説します。人気のデンサン・ホーザン・マーベルの3ブランドを中心に、おすすめ5選も紹介します。
電工ナイフとは?普通のカッターナイフと何が違う?
電工ナイフは、VVF・VVR・CVケーブルやIV線などの電線の外装(シース)や絶縁被覆を剥ぐために設計された専用ナイフです。とくに**VVR(丸型・介在物入り)**や太径CVケーブルなど、VVFストリッパーの溝に収まらない電線では電工ナイフが活躍します。
普通のカッターナイフとの主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 電工ナイフ | カッターナイフ |
|---|---|---|
| 刃の厚さ | 厚め(横方向の力に強い) | 薄い(折れやすい) |
| 刃の角度 | 電線剥きに向く鈍角寄り | 汎用的な鋭角 |
| グリップ | 握力をかけやすい形状 | 汎用的な形状 |
| 安全性 | 折りたたみ式・シース付きが選べる | 刃が露出しやすい |
| 耐久性 | 替刃式・砥ぎ直しで長く使える | 替刃前提(短サイクル) |
カッターナイフは刃が薄く横方向の力で折れやすいため、筆者の経験では心線(中の電線)を傷つけてしまう失敗が起こりやすいと感じます。電気工事の現場では電工ナイフまたは専用ストリッパーを使うのが一般的です。
ナイフを使った具体的な剥ぎ方はVVFケーブルの剥ぎ方 5つのテクニックで図解しています。ストリッパー派の方はVVFストリッパー比較、試験用工具の全体像は第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セットを確認してください。これから第二種を受験する方は第二種電気工事士 学科試験対策も合わせてどうぞ。
電工ナイフの選び方【3つのポイント】
① 折りたたみ式 vs 固定刃式
折りたたみ式は刃を収納できるため安全性に配慮しやすく、腰道具に差しておくのに向いています。現場での日常使いではこちらを選ぶ方が多いです。
固定刃式は刃が出たままなので取り回しが素早い反面、収納時のケガのリスクがあるためシース(鞘)の運用が前提になります。使い方に慣れた中〜上級者向けの選択肢です。
初めて電工ナイフを買うなら、折りたたみ式を選ぶのが無難です。

⭕ 折りたたみ式(初心者向け)
- ⭕ 刃が収納できる
- ⭕ 腰道具に安全に差せる
- ⭕ 持ち運び◎
- △ 開閉に1動作必要
固定刃式(上級者向け)
- ⭕ 取り回しが素早い
- ⭕ シース付きで携帯可
- ✕ 収納時のケガリスク
- ✕ 腰道具への直差し不可
⭐ 推奨: 折りたたみ式・片刃タイプ
② 刃の形状
電工ナイフの刃は「片刃」と「両刃」があります。
- 片刃:電線の外装を剥く用途に向く。刃を当てる角度が安定しやすい
- 両刃:どちら側からでも使えるが、刃の当て方の感覚を掴むまでは扱いに慣れが必要
初心者にはまず片刃タイプから試すのが扱いやすいです。
③ グリップの形状と材質
長時間使っても手が疲れないグリップを選ぶことが重要です。ラバーグリップは滑りにくく、冬場の作業でも扱いやすいです。
おすすめ電工ナイフ5選
第1位:デンサン DK-670F(折りたたみ電工ナイフ・レンチ搭載)
筆者が実際に愛用している一本です。
デンサン(ジェフコム)は電気工事用工具の専門メーカーで、電工ナイフのラインアップに定評があります。DK-670F は折りたたみ式で、刃の厚みと角度がVVFケーブルの外装剥きに合っています。17×21mm レンチが本体に搭載されているのがユニークで、ロックナット作業にも対応できます。
ライナーロック方式で刃を開いたときに固定されるので安全性も高く、筆者が試した5本の中ではレンチ機能込みの総合的な使い勝手のバランスが良かった一本です。価格帯は他の4製品より高めですが、ナイフとレンチを1本にまとめられる点に価値を感じる方に向いています。
気になる点:レンチ部の厚みでグリップが少し太め。手の小さい方は実物を握ってから決めると安心です。価格は他モデルより高めなので、まずは安価なモデルで試したい方は他の選択肢も検討してください。
こんな人におすすめ:レンチ機能もまとめて持ちたい方・1本で多用途に使いたい方
電工ナイフ DK-670F(折りたたみ式)
17×21mmレンチ搭載の折りたたみ式電工ナイフ。ライナーロック方式。
- 17×21mmレンチ搭載
- ライナーロック方式で安全
- 折りたたみ式
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
第2位:ホーザン(HOZAN)Z-680 電工ナイフ(ステンレス替刃式)
電気工事士試験工具でもおなじみのホーザン製ナイフ。技能試験工具セット DK-28 / DK-29 にも標準で入っている定番品です。
Z-680 はステンレス替刃式の折りたたみナイフで、No.2のプラスドライバーだけで刃を交換できるのが特徴。切れ味が落ちたら替刃交換するだけなので、研ぎが苦手な方でも長く使えます。メーカー公開仕様は全長193mm・重量約95g・ハンドルABS/刃部ステンレス・刃部硬度HRC56で、2段階の開閉システムにより開閉時の安全性に配慮されています(HOZAN公式資料)。錆に強いステンレス材を採用しているのもポイント。
気になる点:刃の厚みはやや薄めで、太径CVケーブルなど硬いシース相手には力の入れ方にコツが要ります。
こんな人におすすめ:技能試験対策・長く使いたい方・替刃で刃物を研ぐ手間を省きたい方
第3位:マーベル(MARVEL)MEK-70 折りたたみ式電工ナイフ
マーベルは電設工具に強い国産メーカー。MEK-70 は折りたたみ式スタンダードタイプで、プロの現場作業を想定した設計です。
刃は厚口タイプで、力を入れてもたわまない安定感があります。CV ケーブルなど外装が硬めのケーブルを扱う頻度が高い方に特に向いています。
こんな人におすすめ:プロ仕様の耐久性を求める方・CV ケーブルを多く扱う方
第4位:ツノダ(TSUNODA)EK-70 木柄電工ナイフ
ツノダの定番電工ナイフ。天然木のハンドルで手になじみやすく、昔ながらのクラシックな電工ナイフが好みの方に支持されています。刃長は70mm。
木柄は握ったときのフィット感と温かみがあり、手汗をかきやすい夏場でも滑りにくいです。折りたたみ式(収納時約122mm)でクリップ等は付属しないシンプルな構造のため、ケースやポーチでの携帯が前提になりますが、昔ながらの素朴な使用感が魅力です。
こんな人におすすめ:木柄の手になじむ握り心地を求める方・クラシックなスタイルが好みの方
第5位:ベッセル(VESSEL)DAK-1 電工アジャストナイフ
ドライバーで定評のあるベッセルが展開する電工アジャストナイフ。刃の出し量を自由にアジャストできる独自機構を採用し、作業内容に応じた切り込み深さの調整ができる珍しい構造です。刃は合金工具鋼で研ぎやすく、純正替刃(DAKB-1)も用意されているので長期ランニングコストを抑えられます。
専用ホルダー(TPK-20)と組み合わせると腰道具での携帯性も良好。
こんな人におすすめ:刃深さを調整したい方・替刃式で長期コストを抑えたい方
安全な使い方・ケガしないコツ
電工ナイフでのケガは「慣れてきた頃」に起きやすい傾向があります。以下の基本を守って作業してください。
① 刃を自分の体に向けて引かない
最も多いケガのパターンです。ケーブルの外装を剥くとき、刃は常に自分の体から遠ざかる方向に動かしましょう。

- ⭕ 体から遠ざける方向:刃が外へ向かう
- ✕ 体に向けて引く:滑ったら指を切る
基本ルール: 利き手と反対の手は 刃の進む先より手前 に置く。ケーブルは台か膝に固定し、両手で握らない。
② ケーブルをしっかり固定してから刃を入れる
ケーブルがズレると刃が予期しない方向に動きます。利き手と逆の手でケーブルをしっかり握ってから作業してください。
③ 力任せにしない
外装が硬くても力任せに押し込まないこと。少し角度を変えながらゆっくり刃を入れると、心線を傷つけにくいです。
④ 使わないときは必ず刃を収納する
折りたたみ式でも、うっかり刃が出たまま腰道具に差してしまう事故があります。使用後は必ず刃を閉じる習慣をつけましょう。
初心者が選びがちな失敗例
失敗例①:カッターナイフで代用しようとする
「とりあえずカッターナイフでいい」という考えは避けたほうが無難です。刃が折れて飛んだり、心線を傷つけて後から接続不良になったりするリスクがあります。電工ナイフは1,500〜3,000円程度(※2026年4月時点の参考価格、実勢価格は変動します)で買えるので、専用品を用意する方が結果的に安心です。
失敗例②:両刃タイプを最初に買う
「どちら向きにも使えて便利そう」と両刃を選ぶ初心者の方がいますが、刃の当て方の感覚をつかむ前に両刃を使うと混乱しやすいです。片刃で基本を身につけてからにしましょう。
失敗例③:激安品を購入する
Amazonや100均などで見かける激安電工ナイフは、刃の硬度や厚みが不十分なものがあります。筆者の経験では、激安品は半年〜1年で買い直しになることが多く、結果的に国産定番品を最初から買った方がトータルコストは安く済みました。
電工ナイフが向いている人 / 向いていない人
向いている人
- VVF以外(CV・IV線、太径ケーブル)も剥ぐ機会がある方
- 配管内などストリッパーが入らない場所での作業がある方
- 一本で外装剥き・テープカット・養生切りなど汎用的に使いたい方
ストリッパー中心で十分なケース
- 住宅配線の VVF 1.6/2.0mm 中心の作業しかしない方(VVFストリッパー単独で大半を処理可能)
- 刃物の砥ぎ作業に手間を割きたくない方(その場合は替刃式の電工ナイフを選ぶか、ストリッパー中心の運用が現実的)
- 試験時間の短縮を最優先したい受験生(ストリッパー+小型ナイフの併用が筆者の推奨)
まとめ
電工ナイフの選び方と使い方をまとめます。
- 電工ナイフは折りたたみ式・片刃タイプから始めると扱いやすい
- 筆者の現場常用はデンサン DK-670F(レンチ搭載・折りたたみ・バランス重視)
- 替刃式で手入れの負担を抑えたいならHOZAN Z-680やVESSEL DAK-1が選択肢
- 安全な使い方の基本は「刃を体に向けない」「親指は刃の背に添える」「力任せにしない」
- カッターナイフでの代用は心線損傷のリスクがあり、試験でも使用自粛が推奨されています
電工ナイフは毎日使う相棒です。自分の手に合った一本を選んで、安全に作業してください。
なお、価格表記は2026年4月時点の参考価格で、実勢価格は変動します。電気工事士法の根拠条文はe-Gov 法令検索、試験情報は電気技術者試験センターをご参照ください。
ナイフ以外の腰道具にも興味があれば電気工事士の腰道具の中身を全部公開もあわせてご覧ください。
よくある質問
- 電工ナイフはどのメーカーがおすすめですか?
- 用途で変わります。総合バランスを求めるならデンサン DK-670F、替刃式で長期運用したいならホーザン Z-680、刃出し量を調整したいならベッセル DAK-1 が候補です。技能試験対策ではホーザン製を選ぶと DK-28/DK-29 工具セットとの統一感もあり扱いやすいです。
- 第二種電気工事士の技能試験でカッターナイフは使えますか?
- 禁止ではありませんが、電気技術者試験センターは公式FAQで「使用自粛」を案内しています。刃が薄く力が分散しやすいため、受験者のケガや周囲への迷惑が懸念されるためです。試験では電工ナイフ+VVFストリッパー(HOZAN P-958 等)の組み合わせが無難です。
- 電工ナイフの刃が切れなくなったらどうすればいい?
- ステンレス替刃式(ホーザン Z-680、ベッセル DAK-1)は専用替刃を購入して交換できます。固定刃や木柄タイプ(ツノダ EK-70 等)は砥石で研ぐか買い替えてください。研ぎ作業に自信がなければ最初から替刃式を選ぶと管理が楽です。
- VVFストリッパーがあれば電工ナイフは不要ですか?
- 場面によります。VVFストリッパー(HOZAN P-958 等)は VVF 1.6/2.0mm の2心・3心に対応するため、住宅配線の標準作業の大半をカバーできます。一方、5.5sq以上の太いケーブル、VVR(丸型・介在物入り)、CV/CVT/IV線などストリッパー対応外の電線、ケーブル中間部の剥ぎ、配管内作業では電工ナイフが活躍します。プロは両方持ちが一般的です。
- VVR ケーブルの外装はストリッパーで剥けますか?
- 一般的なVVFストリッパー(P-958等)はVVF専用で、丸型のVVRには対応していません。VVRは電工ナイフでシースに浅く一周切り込みを入れ、介在物(紙やジュート)を避けながら開く方法が一般的です。心線を傷つけないよう、力を入れすぎず角度を浅めに入れるのがコツです。
- 電工ナイフの相場はいくらくらい?
- シンプルな折りたたみ・固定刃タイプは1,500〜3,000円が中心価格帯です(※2026年4月時点の参考価格、実勢価格は変動します)。安すぎるもの(1,000円以下)は刃の硬度や厚みに不安があるため、慎重に選んだほうが無難です。デンサン DK-670F のようにレンチなど多機能を搭載したモデルは6,000円以上になることもあり、機能性重視か価格重視かで選び分けるとよいでしょう。
- 電工ナイフを飛行機に持ち込めますか?
- 刃物は機内持ち込み不可です。預け入れ荷物(受託手荷物)に入れれば運べます。出張で電気工事をする場合は預け入れか、現地で購入するのが現実的です。



