VVFケーブルの被覆剥ぎは、電気工事士なら毎日のようにこなす基本中の基本作業です。しかし「とりあえず剥けてはいるけど、もっと速くてキレイな方法があるはず」と感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、第一種電気工事士の資格を持ち、屋内配線の現場で日々ケーブルを扱う筆者が、VVFケーブルの剥ぎ方を5つのテクニックに分けて実践的に解説します。試験対策と現場作業の両方の視点でまとめました。
VVFケーブルの構造をおさらい
剥ぎ方を理解するには、まずVVFケーブルの構造を頭に入れておくとミスが減ります。
VVFケーブルは外側から 外装シース(白いビニル)→ 介在物(紙テープ)→ 心線の絶縁被覆(黒・白・赤など)→ 銅単線 の順で構成されています。

住宅配線で最も使われる VVF 1.6×2心 は黒(電圧側/L)と白(接地側/N)の2本構成です。エアコン専用回路など 200V 系統を引く場合は、3本の絶縁線が入った VVF 1.6×3心 を使います。

剥ぐ作業は大きく分けて2段階:
- 外装シース(外被)を剥ぐ — 試験では 100mm程度(電線相互接続部)/ランプレセプタクル接続部は 40mm程度/露出形コンセントは 30mm程度
- 心線の絶縁被覆を剥ぐ — 接続箇所だけ 20mm程度(リングスリーブ/差込形コネクタとも基本20mm、輪作りは20mm出して曲げる)
このどちらも、使う工具と手順が違います。混同すると心線を傷つけて事故の原因になるので、初めに整理しておきましょう。
剥ぐために用意したい工具
5つのテクニックのうちどれを採用するかで揃える工具が変わります。代表的なものはVVFストリッパーと電工ナイフです。
ストリッパーは試験対策の主力、電工ナイフは現場での万能ナイフという棲み分けです。両方持っておくのが理想ですが、まずはVVFストリッパー1本があれば始められます。
5つのテクニック比較マトリクス
| 手法 | 速度 | 安全性 | 初心者向き | 必要工具 |
|---|---|---|---|---|
| ① VVFストリッパー | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | HOZAN P-958等 |
| ② 電工ナイフ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | Z-680等 |
| ③ ニッパー | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ニッパー |
| ④ カッター | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | カッターナイフ |
| ⑤ ペンチ捻り | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ペンチ |
テクニック1: VVFストリッパーで一気に剥く
技能試験でも現場でも、最も使用頻度が高いのがこの方法です。HOZAN P-958 や同等品(MCC VS-4A、ベッセル 3500VA-1 など)を使います。VVFストリッパー本体の選び方はVVFストリッパー比較ガイドで詳しく解説しています。
手順
- ケーブルを刃の 「VVF 1.6×2」または「2.0×2」のサイズ穴 に合わせて挟む
- グリップを軽く握って外装に切れ込みを入れる
- 力を入れずにスライド させて外装を引き抜く
- 心線を剥くときは、刃の心線用の段差にケーブルを移して再度挟む

- 外装用(大きい穴):1.6mm / 2.0mm の2つで外装シースを剥ぐ
- 心線用(小さい穴):心線1.6 / 心線2.0 で絶縁被覆を剥ぐ
- 本体のスケール(目盛り):表面に外装10〜20cm(5cm刻み)、裏面に外装2〜12cm(1cm刻み)と心線10〜20mm(1mm刻み)の計3種類のスケールを搭載(公式仕様)。試験で外装100mm/心線20mmを毎回計らずに合わせられる
向いている場面
- 試験対策(最速で剥ぐため)
- 屋内配線で本数が多い現場
- 1.6mm・2.0mm の VVF を中心に扱う作業
サイズが合わない太線(3心の2.0mmや 5.5sq以上)には別の方法が必要です。
VVFストリッパー P-958
第二種電気工事士技能試験の時間短縮に必須のVVFストリッパー。
- 1.6mm・2.0mm の心線剥き対応
- 3心線まで一度に剥ける
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
テクニック2: 電工ナイフで丁寧に剥く(クラシック)
ストリッパーが使えないサイズや、特殊な経路で剥がしたいときは電工ナイフの出番です。代表機種は HOZAN Z-680(折りたたみ式・ステンレス替刃式/全長193mm)。刃の根元側を親指で押さえて、ケーブルを回しながら浅く当てるのがコツです。
外装の剥ぎ方
- ケーブルを安定した台に置き、剥がしたい箇所に刃を当てる
- 刃を軽く押し付けながら、外装を 半周だけ ゆっくり1周させる(心線まで切らない深さで)
- ケーブルを裏返して反対側も切り込みを入れる
- 切り込みから親指で外装をめくって介在紙ごと引き抜く
心線の剥ぎ方
心線の絶縁被覆を剥ぐときは、ナイフを 斜めに当てて削ぐように 動かします。一周ぐるっと当てて被覆を切ろうとすると心線に傷が入りやすいので、必ず 「削ぐ」 意識で。

向いている場面
- 太いケーブル(VVF 2.0×3心、5.5sq など)
- ストリッパーが届かない配管内の作業
- 先輩世代との現場で「ナイフで剥け」と言われたとき
テクニック3: VAストリッパー(一発剥ぎ)
「VVFストリッパー」と混同しがちですが、VAストリッパーは外装と心線を同時に剥ぐ専用工具 です。代表機種は MCC VA-100 など。
握り込むだけで外装と心線を一度に処理できるため、新築の屋内配線のように 同じ寸法で大量に剥ぐ ときに圧倒的な速さを発揮します。
注意点
- ケーブルサイズと刃のサイズを一致させる必要がある(サイズ違いの穴で剥ぐと心線傷の原因)
- 試験では 「使用不可」と明記されてはいないが、対応サイズの制約から使う受験生は少数派
- 実勢価格は VVFストリッパーより高めの傾向(購入時は最新の価格を確認してください)
筆者の現場でも、新築マンション系の応援に呼ばれたときは VAストリッパーが活躍しています。一方、リフォームや既設改修ではサイズがバラバラなのでVVFストリッパーの方が使いやすいです。
テクニック4: 中間部分だけ剥ぐ(分岐用)
ケーブルの途中で分岐を取りたいとき、外装を 一部だけ窓を開けるように剥ぐ テクニックです。
手順
- 剥ぎたい範囲の 両端に切り込み をナイフで入れる
- その間に 長手方向の切れ込み を1本入れる
- 切り込みからめくって介在紙を露出させる
- 介在紙をハサミやカッターで切り取り、心線を露出させる

- ① ② 両端に直角の切れ込みを入れる
- ③ その間に長手方向の切れ込みを1本入れる
- めくると介在紙が露出 → 切り取って心線にアクセス
このテクニックは VVFストリッパーでは難しく、電工ナイフが必須です。
折りたたみ式ナイフを腰道具に常備しておくと、現場で急に必要になったときも素早く対応できます。
向いている場面
- 既設配線から分岐を取る改修工事
- ジョイントボックス内での追加結線
テクニック5: 試験で剥ぐ作業を時短するコツ
技能試験は時間との戦いです。本番で1問あたりの剥ぎ作業を短縮するコツを3つ紹介します。慣れによって個人差はありますが、練習を重ねれば数秒単位の短縮が見込めます。
コツ① 寸法を毎回測らない
外装100mm・心線20mmは、ストリッパー本体に刻印されたスケール(目盛り) を使えば毎回計らなくて済みます。HOZAN P-958 は表面に外装10〜20cm(5cm刻み)、裏面に外装2〜12cm(1cm刻み)と心線10〜20mm(1mm刻み)のスケール(公式仕様)が入っているので、ケーブルを当てれば寸法が一目で確認できます。
コツ② 心線を剥いてから外装を抜く
通常は外装→心線の順ですが、P-958の刃で外装に切り込みを入れた直後、心線部分を奥側に挟み替えてグリップを2回握る と、外装も心線も一連の動作で剥けます。慣れてくると数秒の短縮につながり、13問の練習を積み重ねるほど安定して時短できます。
コツ③ 剥いた後はすぐ寸法を確認
「外装が短かった」「心線が長すぎた」のリカバリーは時間ロスが大きいです。剥いた直後に指で軽く摘まんで長さを目視確認 する習慣をつけましょう。
やってはいけないNG例

- ⭕ 健全な心線:表面なめらか・直径一定
- ✕ 傷あり心線:凹み・ささくれ・断面変形 → 許容電流低下・腐食・折損
心線傷は試験で**欠陥(一発不合格)**判定。現場では事故予備軍です。
最後に、現場でも試験でもアウトな剥ぎ方をまとめます。
| NG | 理由 |
|---|---|
| カッターで外装を一周ぐるりと切る | 心線まで刃が到達して断線・キレツの原因 |
| ストリッパーをサイズ違いの穴で使う | 心線に深い傷が入り欠陥扱いになる |
| ナイフを心線に直角に当てる | 単線にキレツ・断線 |
| 剥いた被覆の切れ端を端子に挟む | 接触不良・発熱の原因 |
| ライターやヒートガンで外装を焦がして剥ぐ | 絶縁体が劣化し漏電・短絡リスク |
| 介在紙を引っ張って心線をしごく | 心線被覆が伸びて寸法ズレ |
どのテクニックから覚えるべきか(受験生 / プロ向け)
5つのテクニックは全て覚える必要はなく、立場によって優先順位が変わります。
受験生(第二種電気工事士 技能試験)が優先すべき
- テクニック1(VVFストリッパー)を最優先:候補問題13問の9割はP-958で対応できる
- テクニック5(時短コツ)は本番1ヶ月前から:基本フォームができてから速度を求める
- テクニック2の電工ナイフは「ストリッパー忘れた時の保険」程度の優先度でOK
- VAストリッパーは試験で使う受験生は少数派なので無理に覚えなくて良い
現場プロ(実務者)が優先すべき
- テクニック2(電工ナイフ)が必須:太線・配管内・特殊サイズで活躍
- テクニック4(中間剥ぎ)は改修工事で頻出:既設配線の分岐は窓開けで処理
- 新築マンション系の応援に行くならVAストリッパーを1本所有
- VVFストリッパーは1.6/2.0用に1本あれば十分
筆者は「試験用にHOZAN P-958、現場用に電工ナイフ Z-680 と折りたたみ式 MEK-70」の3本体制で日々の屋内配線現場をこなしています。
関連JIS規格・出典
剥ぎ作業に関連する主な規格・参考情報は次のとおりです。
- 電気工事士法:e-Gov法令検索 — 配線工事に関する資格要件の根拠
- JIS C 9711:屋内配線用電線接続工具(圧着端子・リングスリーブ用工具の規格、JIS C 2805/C 2806 と対応)
- 電気技術者試験センター 欠陥の判断基準:公式ページ — 心線の傷・外装の剥ぎ不足・リングスリーブ周辺の心線露出など、欠陥扱いの判断基準を公式に公開
- 電気技術者試験センター:公式サイト — 候補問題13問・試験要項の発表元
まとめ
| テクニック | 工具 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 1. VVFストリッパー | P-958 等 | 試験・標準サイズ |
| 2. 電工ナイフ(クラシック) | Z-680 / DK-670F | 太線・現場 |
| 3. VAストリッパー | MCC VA-100 等 | 大量剥ぎ |
| 4. 中間剥ぎ | 電工ナイフ | 分岐工事 |
| 5. 試験での時短 | P-958 | 技能試験対策 |
VVFケーブルは扱う頻度が高いぶん、剥ぎ方を一つマスターすれば作業全体の速度が大きく変わります。まずはVVFストリッパーで「外装→心線」の基本を体に覚えさせ、その後で電工ナイフを使った応用に進む のが最短ルートです。
工具選びで迷ったら、関連記事の第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セット、電工ナイフのおすすめ5選、電気工事士の腰道具の中身、VVFストリッパー比較ガイド、技能試験前の学科対策は第二種電気工事士 学科試験 完全対策もあわせてご覧ください。
よくある質問
- VVFストリッパーと電工ナイフ、どちらを先に買うべき?
- VVFストリッパー(HOZAN P-958)が先です。標準サイズの剥ぎ作業で圧倒的に速く、技能試験対策でも必須級の工具です。電工ナイフは太線や中間剥ぎなどの応用作業で必要になるので、2本目として揃えるのが効率的です。
- 心線に傷を入れてしまったらどうすればいい?
- 傷の深さで判断します。表面の浅い擦り傷なら継続使用できる場合もありますが、電気技術者試験センターの判断基準では「電線を折り曲げたときに心線が露出する傷」「心線を折り曲げたときに心線が折れる程度の傷」などは欠陥扱いとされます。試験では切り直して再剥きするのが安全です。現場でも深い傷は接触不良・断線の原因になるため、迷ったら切り直すのが鉄則です。
- VVFストリッパーで太いケーブル(5.5sq)を剥けますか?
- 標準的なVVFストリッパー(HOZAN P-958 等)は VVF 1.6mm/2.0mm の2心・3心までが対象で、5.5sq以上には対応していません。5.5sq以上を剥く場合は **電工ナイフ** か、太線対応のケーブルストリッパー(MCC VS-R 系など)を使うのが現実的です。
- 中間部分の剥ぎ(窓開け)はストリッパーでもできますか?
- 原則できません。VVFストリッパーは外装の端から引き抜く構造なので、中間部分は刃が届きません。中間剥ぎは電工ナイフで両端と長手方向に切れ込みを入れる手法が標準的です。
- 技能試験で剥ぐ寸法はどのくらい?
- 電線相互接続部は外装約100mm・心線被覆約20mmが基本です。ランプレセプタクル接続部は外装40mm程度・心線20mm(輪作り用)、露出形コンセントは外装30mm程度が目安。HOZAN P-958は本体に外装10〜20cm(5cm刻み)・外装2〜12cm(1cm刻み)・心線10〜20mm(1mm刻み)のスケールが入っているので、これを物差し代わりに使うと毎回計らずに済みます。各候補問題13問の指定寸法を練習で覚えておきましょう。



