「部屋のコンセントが足りない。自分で増やせないかな?」
こう思ったことがある方は多いはずです。でも、電気工事を無資格でやると法律違反になる可能性があります。この記事では、第一種電気工事士の資格を持つ筆者が、正直に・法律の根拠とともに「できること・できないこと」を解説します。
結論:コンセントの増設は「電気工事士の資格が必要」
先に結論を言います。
コンセントを新たに増設・移設する工事は、電気工事士の資格が必要です。
これは感覚論ではなく、法律で定められています。根拠は「電気工事士法 第3条第2項」です。
第一種電気工事士免状の交付を受けている者及び第二種電気工事士免状の交付を受けている者でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業(電気工事士法施行令で定める軽微な工事を除く。)に従事してはならない。(要旨)
コンセントの増設は「一般用電気工作物に係る電気工事」にあたるため、無資格での作業は**違反(電気工事士法 第14条:3月以下の懲役または3万円以下の罰金)**となります。
法令の原文は電気工事士法(e-Gov法令検索)で確認できます。最新の改正内容は必ず一次情報で照合してください。

「軽微な工事」とは何か(施行令第1条)
電気工事士法 施行令第1条で「軽微な工事」として定められた作業は、資格なしでも行えます。代表例は次のとおり(e-Gov 電気工事士法施行令)。
- 600V以下で使用する差込み接続器・ねじ込み接続器・ソケットなどに、コードまたはキャブタイヤケーブルを接続する工事
- 600V以下で使用する電気機器・蓄電池の端子に電線をねじ止めする工事
- 電鈴・インターホン・火災感知器・豆電球など、二次電圧36V以下の小型変圧器の二次側配線工事
- 電力量計・電流制限器・ヒューズを取り付け/取り外す工事
- 電線を支持する柱・腕木などの工作物を設置・変更する工事
具体的には、照明器具に付いている引っ掛けシーリングへの取り付け、ヒューズの交換、差込プラグやコードコネクタの取り替え、蛍光灯ランプの交換などが該当します。
ただし、コンセントの増設・移設は「軽微な工事」に含まれません。 壁の中や分電盤に手を入れる作業、配線器具(コンセント・スイッチ等)そのものの取り替えは、すべて電気工事士の業務範囲です。「DIYで合法か違法か」の境界線は、この一点で判断してください。
資格なしでできること・できないこと
✅ 資格なしでできること
| 作業 | 解説 |
|---|---|
| 延長コードの使用 | いわゆるタコ足配線。電気工事ではない |
| テーブルタップ・電源タップの使用 | 同上 |
| コンセントに差し込むタイプの増設タップ | コンセントの「口数を増やす」製品はOK |
| 照明器具の取り替え(差し込み式のみ) | 電源コードを差し込むだけの器具 |
| インターホンの電池交換・簡単な取替 | 電気工事を伴わないもの |
テーブルタップや延長コードは、あくまで「プラグを差し込む」行為であり、電気工事には該当しません。これらは資格なしで使えます。
❌ 資格なしではできないこと
| 作業 | なぜダメ? |
|---|---|
| コンセントの増設・新設 | 電線の接続工事にあたる |
| コンセントの移設 | 同上 |
| スイッチの交換・増設 | 同上 |
| 分電盤の操作・ブレーカーの交換 | 特に危険。感電・火災リスク大 |
| 照明の配線工事 | 電線を直接扱う工事 |
| エアコン専用回路の新設 | 幹線からの分岐を伴う |
「壁の中を通る電線を触る作業」は基本的に全てNGと思ってください。
なぜ無資格工事は危険なのか
法律違反というだけでなく、実際に重大事故につながるリスクがあります。
接触不良による発熱・火災
コンセントの端子への配線は、正しい締め付けトルクと接続方法が必要です。甘い締め付けや誤った結線は、トラッキング現象(コンセント周辺の発火)や過熱による火災の原因になります。
筆者が現場でよく見かける「無資格っぽい工事」の特徴は、電線の被覆を剥きすぎていたり、端子への挿入が浅かったりすることです。こうした施工ミスは、数年後に発熱として現れることがあります。
実際に筆者が改修工事で出会った例では、無資格でDIY増設されたコンセントの裏側で配線が焦げ、壁紙裏まで炭化していたケースがありました。住人の方は「最近そのコンセントが熱くなる」と感じていたそうですが、原因に気づくのが遅れていれば壁内火災になっていたかもしれません。
圧着・差込形コネクタの誤使用
電線の接続には、リングスリーブ圧着や差込形コネクタを正しく使う必要があります。電気工事士法に基づく技能試験でも問われるこの基本を知らないまま、自己流でビニールテープだけで巻いて済ませているDIYを目にすることもあります。
ビニールテープ巻きだけの接続は、湿気で容易に絶縁が崩れ、漏電・短絡を引き起こします。「とりあえず電気が来てるからOK」は数ヶ月後の火災予備軍だと思ってください。
感電事故
火災保険・住宅保険が下りないリスク
無資格工事によって引き起こされた火災は、火災保険の支払い対象外になるケースがあります。持ち家であれ賃貸であれ、経済的にも大きなリスクを負うことになります。
第二種電気工事士があれば自分で工事できる範囲
「自宅のコンセント増設くらい合法的にDIYしたい」という方は、第二種電気工事士の資格取得が現実的なゴールです。試験の主管である一般財団法人 電気技術者試験センターの公式案内で最新の試験日程・申込方法を確認してください。第二種で扱える主な範囲は次のとおり。
| 範囲 | 第二種で工事可 |
|---|---|
| 一般住宅(600V以下) | ⭕ |
| 小規模店舗(600V以下) | ⭕ |
| 高圧受電のビル・工場 | ❌ 第一種が必要 |
| 自家用電気工作物 | ❌ 第一種が必要 |
つまり、自宅の電気工事は第二種で十分まかなえます。試験は年2回(上期5〜7月、下期10〜12月)実施され、独学・通信講座・職業訓練校など多様な学習ルートがあります。
取得までの目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 学習期間 | 3〜6ヶ月 |
| 学習時間 | 100〜150時間 |
| 受験料 | 11,100円(インターネット申込・2026年度) |
| 教材費 | 5,000〜10,000円 |
| 工具セット | 約20,000円(HOZAN DK-28等) |
| 練習材料費 | 10,000〜15,000円 |
| 合計 | 約55,000円 |
約55,000円で「自宅の電気工事を一生合法的にDIYできる権利」が手に入ると考えれば安いものです。業者に1回コンセント増設を頼むだけでも15,000〜30,000円かかることを考えると、3〜4回分の工事費で資格が取れる計算になります。
業者に頼む場合の費用目安
では、プロに頼むといくらかかるのでしょうか。一般的な目安を紹介します。
| 工事内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 既存回路からのコンセント増設(簡易) | 8,000〜15,000円程度 |
| 壁内配線を伴うコンセント増設 | 15,000〜30,000円程度 |
| エアコン専用回路の新設 | 20,000〜40,000円程度 |
| 分電盤の増設・交換 | 30,000〜80,000円程度 |
※ 業者・地域・施工条件によって変わります。複数社に見積もりを取ることをおすすめします。
「高い」と感じるかもしれませんが、安全・合法・保証付きで工事してもらえることを考えると、適切な価格です。
DIY派に向けた「安全にできること」
「それでもDIYで何かしたい!」という気持ちはよくわかります。資格なしでも安全にできることを紹介します。
おすすめ①:USB付き電源タップを活用する
コンセント口数が足りない場合は、USB対応の多口電源タップが最もスマートな解決策です。
おすすめ②:コンセント増設アダプター(差し込み式)
既存のコンセントの口数を増やすだけなら、差し込み式のアダプターが使えます。ただし、容量オーバーに注意してください(1口あたりの上限:1,500W/15A)。
おすすめ③:第二種電気工事士の資格を取る
「どうしても自分でやりたい」という方には、思い切って第二種電気工事士の資格を取ることをおすすめします。
学科試験(旧・筆記試験)と技能試験の2段階ですが、独学でも十分に合格できます。取得すれば自宅の電気工事を合法的に自分でできるようになり、長期的には大きなコスト削減になります。
技能試験を受けるなら工具セットの準備が必要です。詳しくは第二種電気工事士 技能試験に必要な工具セットをご覧ください。HOZAN DK-28はVVFストリッパーを含む試験用フルセットで、初受験の定番です。
電気工事士技能試験 工具セット DK-28
第二種電気工事士技能試験向けの工具セット。VVFストリッパー P-958 込みの8点セット。
- 全8点セット(P-738圧着工具・P-958 VVFストリッパー・電工ナイフZ-680・布尺SB-67等)
- ツールポーチ SB-66 付属
- 第二種技能試験対策ハンドブック付属
- 初受験者がゼロから揃える場合に過不足のない構成
※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。
合格後はプロも使う検電器が必須です。安全確認の最重要工具なので、信頼できるメーカーを選んでください。
どのルートが向いているか(DIY層 / 業者依頼層 / 資格取得層)
「コンセントを増やしたい」と思った時の選択肢は、ご自身の状況によって最適解が変わります。
業者依頼が向いている人
- 1〜2箇所だけ増設したい、頻度は数年に1回
- 賃貸物件、または分譲マンションで管理規約の確認が必要
- 工事の保証書・施工証明書がほしい(火災保険対応のため)
- 学習に時間を割きたくない
DIY層(資格不要の範囲で工夫)が向いている人
- 「電源タップで足りる」程度の不足
- USB充電器や延長コードでカバーできる用途
- 賃貸で原状回復義務がある
第二種電気工事士の取得が向いている人
- 戸建て持ち家で複数箇所の増設・改修を考えている
- 将来的にエアコン増設・分電盤改修も自分でやりたい
- DIY全般が好きで、3〜6ヶ月の学習に投資できる
- 業者費用を5回以上払う見込みがある
「資格を取るか、業者に頼むか」で迷ったら、直近5年で予定している電気工事の総額を試算してみてください。3万円×5回=15万円なら、資格取得(約5万円)の方が割安になります。
筆者の経験では、戸建て持ち家のDIY好きな方は資格取得、賃貸住まいなら業者依頼やタップ活用が無難な選択です。
まとめ
コンセント増設のDIYについて、ポイントをまとめます。
- コンセントの増設・移設は電気工事士の資格が必要(電気工事士法第3条)
- 無資格工事は罰則(電気工事士法第14条:3月以下の懲役または3万円以下の罰金)があり、罰金以上に火災・感電・保険適用外といったリスクが大きい
- 業者への依頼費用は工事内容により8,000〜数万円が目安
- 資格なしでできることは、電源タップや差し込み式アダプターの活用
- 「自分でやりたい」気持ちが強いなら、第二種電気工事士の取得がベスト
電気は目に見えない危険をはらんでいます。「たぶん大丈夫だろう」という判断は禁物です。正しい知識で、安全に電気を使いましょう。
資格を取ったあとに揃える工具については電気工事士の腰道具の中身、ナイフの選び方は電工ナイフのおすすめ5選、増設後の竣工検査で必須となる絶縁抵抗測定は絶縁抵抗計(メガー)の使い方、学科試験の独学法は第二種電気工事士 学科試験 完全対策もぜひ参考にしてください。
よくある質問
- コンセント増設をDIYでやって見つかった場合、どうなりますか?
- 電気工事士法第14条により3月以下の懲役または3万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、無資格工事が原因の火災が発生した場合は火災保険が下りないことが多く、損害賠償も自己負担になります。費用面でも法律面でも、業者依頼が安全です。
- 電源タップを延長コードで増やすのは違法ですか?
- 違法ではありません。プラグを差し込む行為は電気工事に該当しないため、資格なしで使えます。ただし、タコ足配線は容量オーバー(1500W/15A)になりやすく、過熱や火災リスクがあるので注意してください。
- コンセント増設の業者費用を安く抑えるコツはありますか?
- 複数社から見積もりを取るのが基本です。地元の電気工事店、量販店(ヤマダ電機・コジマ・ジョーシンなど)、リフォーム会社では3〜5割の価格差が出ることがあります。同時に複数箇所を依頼するとまとめて値引きされるケースもあります。
- 第二種電気工事士の資格は独学で取れますか?
- 取れます。学科試験(旧・筆記試験/2023年度から名称変更)は過去問中心の独学で合格率約58%、技能試験は工具を揃えて候補問題13問を練習すれば合格率約72%です(2020〜2025年度平均)。総コストは教材・工具・受験料込みで約5〜6万円、期間は3〜6ヶ月が目安です。
- 賃貸物件で大家の許可なくDIY工事をしたら?
- 資格の有無に関わらず、原状回復義務違反になります。退去時に高額な原状回復費を請求される可能性があり、契約違反として強制退去のリスクもあります。賃貸では必ず大家・管理会社の許可を取った上で、有資格業者に依頼してください。



