VVFとVVR、何が違う?」「CVを使うのはどんな時?」——住宅・店舗の屋内配線で必ずぶつかる疑問です。3種は名前こそ似ていますが、絶縁材の種類・許容温度・断面の形・適用箇所がはっきり分かれており、選定を誤ると過熱・絶縁劣化・最悪は火災につながります。

筆者は第一種電気工事士として、住宅の分岐回路から店舗の幹線・受変電二次側まで、3種すべてを日常的に扱っています。本記事では、現場で迷わないための使い分け早見表と、JIS規格・許容電流・価格差を一枚にまとめ、断面構造をSVG図解で可視化しました。

3種のケーブル断面イメージ(同スケール)黒 1.6mm白 1.6mmVVF(平形)2芯・介在物なしシース:灰PVCVVR(丸形)3芯・介在物ありシース:灰PVC薄緑=XLPE絶縁CV(単芯×複数)XLPE絶縁・90℃シース:黒PVC※同スケールで描画。色は識別用:黒線=黒、白線=白(破線)、赤線=赤芯、緑=XLPE絶縁体
図A: VVF / VVR / CV 3種の断面イメージ(同スケール並列)

3種のケーブル一覧(30秒で分かる早見表)

冒頭サマリーをもう一歩深掘りしたスペック早見表です。詳細は各章で掘り下げますが、現場で「どれを使うか」を判断するときの出発点になります。

ケーブル正式名絶縁体シース形状許容温度主な用途
VVF600V Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-typeビニル(PVC)ビニル(PVC)平形60℃住宅の分岐回路
VVR600V Vinyl insulated Vinyl sheathed Round-typeビニル(PVC)ビニル(PVC)丸形60℃露出配線・引込
CVCross-linked polyethylene insulated Vinyl sheathed架橋PE(XLPE)ビニル(PVC)丸形90℃幹線・大容量
3種のケーブル断面構造(2心モデル)VVF(平形)PVC絶縁+PVCシース許容温度 60℃VVR(丸形)介在物入りPVC絶縁+PVCシース許容温度 60℃CV(XLPE絶縁)XLPE絶縁XLPE絶縁+PVCシース許容温度 90℃※絶縁材の違いが許容温度・許容電流・適用箇所すべてを左右する
図1: VVF・VVR・CVの断面構造比較(2心の場合)

VVF(600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形)

VVFは住宅の分岐回路で最も頻繁に使われるケーブルです。「Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type」の略で、絶縁体・シースともにビニル(PVC)、断面は平形。心線が平行に並ぶのが特徴です。

構造(平形・心線平行配置)

PVC絶縁の心線(黒・白・赤など)が平面に並び、その上から共通のPVCシースで覆っています。介在物がないシンプルな構造で、剥ぎ取りも容易。VVFストリッパー1本で素早く剥けるため、第二種電気工事士の技能試験でも標準教材として使われます。

用途(屋内配線・分岐回路)

住宅・店舗の低圧屋内配線、特にコンセント・照明への分岐回路(15〜20A)が中心です。隠蔽配線(壁内)・天井裏配線で広く使われ、露出配線でも問題なく使えます。

太さラインナップ(1.6/2.0/2.6mm × 2c/3c)

実用上ほぼ次の組み合わせに集約されます。

太さ2心(2C)3心(3C)主な用途
1.6mm照明・15Aコンセント
2.0mm20Aコンセント・エアコン
2.6mm主幹・大容量分岐

許容電流の詳細は電線の許容電流ガイドで各サイズを早見表化しています。

メリット・デメリット

メリット

  • 剥ぎ取りやすく施工スピードが速い
  • 価格が比較的安価(3種のなかでは最も廉価な部類)
  • ステープル・サドルでの固定が容易(平形ゆえ)

デメリット

  • 単線サイズ(mm規格)が中心で、大電流幹線向けの太径ラインナップが限られる
  • 屋外直射日光下では紫外線でシース劣化が早まりやすい
  • 平形ゆえに電線管内の通線抵抗が大きく、丸形ケーブルより取り回しに難がある

VVR(600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形)

VVRはRound-type(丸形)のVV系ケーブルです。絶縁体・シースともPVCでVVFと同じ材料を使いますが、断面が円形で機械的強度が高いのが特徴です。

構造(丸形・心線が中心配置)

心線2〜4本を中心にまとめ、**介在物(紙やジュート)**で隙間を埋めて円形を保ちます。その上をPVCシースで覆う構造。介在物のおかげで外圧に強く、曲げに対しても心線が偏りにくくなっています。

用途(屋外配管・露出配線)

VVFが平形で見栄えが悪いのに対し、VVRは丸形で配管・配線ダクトを通しやすく、引込線・露出配線でも整った見た目になります。引込柱から建物への引込線、ベランダ露出配線、屋外コンセント回路などが定番用途です。

VVFとの違い・選定基準

許容電流はVVFとほぼ同等(同じビニル絶縁で60℃許容)ですが、形状と機械的強度で使い分けます。

観点VVFVVR
形状平形丸形
介在物なしあり
屋外露出配管必須露出可
配管通線抵抗ありスムーズ
剥ぎ取り容易やや手間
価格安いやや高い

価格差

同じ太さ・心数で比べると、VVRはVVFより約20〜40%高いのが一般的です。介在物・丸形成形のコストが乗るためで、太いサイズほど差が広がります。

CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)

CVはCross-linked polyethylene(架橋ポリエチレン、XLPE)絶縁の電力ケーブルで、低圧幹線から高圧引込まで幅広く使われます。VV系とは絶縁材が根本的に異なるため、許容温度や許容電流の領域が大きく変わります。

構造(XLPE絶縁)

ポリエチレン分子鎖を化学的に架橋(つなぎ合わせ)して耐熱性を上げたXLPEで心線を絶縁し、その上をPVCシースで覆います。架橋によりポリエチレンが熱で溶けにくくなるのがポイントで、これが許容温度90℃の根拠になっています。

用途(高圧/低圧幹線・大容量回路)

  • 低圧幹線(受電盤〜分電盤)— 60〜250sqの大径CV
  • 動力回路(三相200V・400V) — 工場・店舗の大型機器
  • 高圧引込線(6.6kV) — 同等構造の高圧CV(JIS C 3606:2022)
  • 太陽光発電の接続箱以降の集電・連系配線(直流側はPV専用ケーブル、交流側はCV)

許容温度(90℃)の意義

VVF/VVRが許容温度60℃なのに対し、CVは導体温度90℃まで連続使用できる仕様です。30℃の温度マージンの差が許容電流の差になり、同じ導体断面積でもCVは約1.4〜1.6倍の電流を流せます。

太さ(より線)VVR(2c)許容電流CV(2c)許容電流
8sq約42A約65A
14sq約59A約91A
22sq約78A約120A
38sq約110A約170A

※気中暗渠布設・周囲温度40℃基準。詳細値は各メーカー仕様書を参照。

VVF/VVRより許容電流が大きい理由

絶縁体の最高使用温度が60℃→90℃に上がることで、銅導体の許容発熱量が増えます。発熱は I²R(電流の2乗 × 抵抗)に比例するため、温度マージンが30℃広がるとそのぶん大きな電流を流せる、という単純明快な物理です。

CVT(CVトリプレックス)も併記

CVケーブルの兄弟分として現場で頻出するのが**CVT(トリプレックス)**です。

CVTは単心CV(CV-1c)を3本撚り合わせた構造で、共通シースを持ちません。これにより以下の利点があります。

  • 許容電流が約10%大きい(放熱性が良いため)
  • 重量が約10%軽い(介在物なし)
  • 曲げやすく端末処理が容易
  • 3心一体のCV-3cより施工性が高い

3相動力幹線ではCVTが主流で、CV-3cは特殊用途に限定される傾向です。

比較CV-3cCVT
構造単心3本+介在物+共通シース単心3本撚り合わせ
重量重い約10%軽い
許容電流標準約10%大きい
端末処理介在物処理が必要簡単
価格同等同等

【完全早見表】3種の比較

ここまでの内容を1枚の表に集約しました。現場・図面検討時の「答え一発」用にどうぞ。

項目VVFVVRCV
正式名(英)Vinyl insulated Vinyl sheathed FlatVinyl insulated Vinyl sheathed RoundCross-linked PE insulated Vinyl sheathed
絶縁体ビニル(PVC)ビニル(PVC)架橋PE(XLPE)
シースビニル(PVC)ビニル(PVC)ビニル(PVC)
断面形状平形丸形丸形
介在物なしありあり(3c以上)
許容温度60℃60℃90℃
1.6mm 2c許容電流18A18A
2.0mm 2c許容電流23A23A
14sq 2c許容電流59A91A
サイズ展開1.6〜2.6mm1.6mm〜325sq2sq〜500sq
価格(同径比・目安)1.0倍1.2〜1.4倍1.5〜2.0倍
屋内分岐△(過剰)
屋外露出✕(配管必須)
動力幹線
JIS規格C 3342C 3342C 3605
用途と推奨ケーブルのマッピング電流屋内屋外VVF屋内分岐15〜20AVVR引込・露出配線CV / CVT幹線・動力・大容量
図2: 用途別の選定マトリクス(同じ太さ帯で比較)

用途別の選び方(住宅/店舗/工場/屋外引込)

実際の現場での典型的な選び方を業態別に整理します。

住宅(戸建て・マンション)

  • 分岐回路:VVF 1.6mm-2c / 2.0mm-2c が標準
  • エアコン200V専用:VVF 2.0mm-2c
  • 主幹(分電盤直前):VVF 2.6mm-3c または CV 8〜14sq
  • 引込線(電柱→建物):VVR または CV 14sq

戸建て新築では屋内配線の大半をVVFが占め、引込部分のみVVR/CVという構成が一般的です。

店舗・テナント

  • 照明・コンセント:VVF 1.6/2.0mm
  • 厨房動力(三相200V):CVT 14〜38sq
  • 空調室外機回路:VVF 2.0mm or CV 5.5sq
  • 看板・サイン回路:VVR or CV(屋外露出のため)

厨房・空調が大容量化しているため、動力幹線はCVTが選ばれることが多いです。

工場・大型施設

  • 受変電二次側〜主分電盤:CV 100〜500sq、CVT 38〜325sq
  • 動力幹線:CVT 38〜250sq
  • 照明・コンセント分岐:VVF(既設)またはケーブルラック上のCV小径

工場では幹線〜分岐の主要部分をCV/CVTで設計するのが一般的です。

屋外引込・架空配線

  • 架空引込(電力会社→需要家):DV線(屋外用ビニル絶縁電線)またはCV
  • 建物側引込口〜分電盤:CV(耐候性・許容電流の余裕)
  • 太陽光発電のストリング配線:PV-CQ/PV-CC等の太陽光発電用ケーブル(耐候性XLPE系)

屋外で直射日光に当たる露出配線はCVが推奨されます。VVF/VVRは耐候性が劣るため、屋外露出は配管か遮光カバーの併用を検討してください。

使用シーンから選ぶフロー配線環境を確認屋内の隠蔽配線・分岐回路?YESVVF15〜20A屋内分岐最安・施工性◎NO屋外露出・地中・大容量幹線?YESCV / CVT幹線・動力・屋外90℃・許容大NOVVR引込・露出・配管通線
図B: 配線環境から選ぶフローチャート(YES/NO分岐)
3種スペック比較レーダーチャート54321耐熱性価格安さ施工性屋外耐性入手性VVF(屋内分岐)VVR(引込/露出)CV(幹線/動力)5=最良1=最低
図C: 3種のスペック比較レーダーチャート(5軸・0-5スケール)

JIS規格対応(JIS C 3342 / JIS C 3605)

3種のケーブルは以下のJIS規格で製造・性能・試験方法が定められています。

JIS C 3342(VVF/VVR等)

正式名「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル」。VVF・VVR・VVF-G(地中用)等が対象。最新版はJIS C 3342:2012(2012年改訂)が現行で、心線色・絶縁厚さ・シース厚さ・耐電圧・絶縁抵抗などを規定しています。

JIS C 3605(CVケーブル)

正式名「600Vポリエチレンケーブル」。CV・CE(耐燃ポリエチレン版)・CVT・CET 等が対象。最新版はJIS C 3605:2022(2022年改訂)。架橋PE絶縁の最高許容温度90℃、PVCシースの仕様等が規定されています。

関連法令

  • 電気設備技術基準の解釈 第146条(低圧配線に使用する電線等/電線の許容電流)
  • 電気設備技術基準の解釈 第148条(低圧幹線の施設)
  • 電気設備技術基準の解釈 第149条(低圧分岐回路等の施設)
  • 内線規程 JEAC 8001-2022(第14版)(電線の選定・施工基準)
  • 電気用品安全法(PSE):屋内配線用ケーブルはPSE対象品目として流通

よくある間違いと現場の選定ミス

筆者が現場でよく見るNG例をまとめます。新人〜2年目の方は特に要注意

1. 「VVFはどこでも使える」と思い込む

VVFは直射日光下の屋外露出は不可。耐候性のあるVVRかCV、または配管内通線が必須です。

2. VVF 2.0mmの許容電流をIVと混同

IV単線2.0mmは35Aですが、VVF 2.0mm-2c は23A。同じ太さでも形態が違うと許容電流が変わるため、ブレーカー選定で誤らないように。

3. 「CVは過剰」と思って小径回路で避ける

確かに住宅の分岐回路にCVは過剰ですが、屋外露出・高温環境ではCVが安全側です。価格差より経年劣化リスクを優先しましょう。

4. CVT vs CV-3c の選定ミス

3相動力幹線でCV-3cを使うとCVTより許容電流が小さく、ケーブルラックの占有率も増えます。標準はCVTです。

5. 介在物処理を忘れる

VVR・CV-3cは介在物(紙・ジュート等)が入っているため、端末処理時に介在物の切り戻しが必要。VVFと同じ感覚で剥くと端末処理が雑になります。詳細はVVFケーブルの剥ぎ方で剥ぎ取りの基本を確認してください。

関連工具

3種のケーブルを扱うのに必要な工具を整理しました。

VVFストリッパー(VVF/VVR細径用)

VVFと小径VVRはストリッパー1本で素早く剥けます。HOZAN P-958は1.6/2.0mmの2心・3心すべてに対応。詳細はVVFストリッパー比較で各機種を比較しています。

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第二種電気工事士技能試験の時間短縮に必須のVVFストリッパー。

  • 1.6mm・2.0mm の心線剥き対応
  • 3心線まで一度に剥ける

※価格は変動します。クリック時点のショップ表示価格をご確認ください。

電工ナイフ(CV・大径ケーブル用)

CVや太径VVRはストリッパーでは剥けません。電工ナイフでシースを縦割りして心線を取り出すのが基本作業です。

絶縁抵抗計(メガー)

CVもVVFも、施工後の絶縁抵抗測定は必須。電技解釈第14条の判定基準は絶縁抵抗計の使い方で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

VVFとVVR、住宅の屋内配線ならどちらを選ぶべき?
屋内の隠蔽配線・分岐回路ならVVFが標準です。価格が安く、剥ぎ取り・施工性も上回ります。VVRは屋外露出・引込・配管通線がメインのため、用途が分かれていると考えてください。
CVケーブルは住宅の分岐回路に使ってもよい?
技術的には問題なく使えますが、価格が1.5〜2倍になり、剥ぎ取りも電工ナイフが必要で施工性が落ちるため過剰になりがちです。CVは幹線・動力回路・屋外引込など、許容電流や耐候性が必要な箇所に使うのが一般的です。
VVFの許容電流が同じ太さのIV単線より小さいのはなぜ?
VVFは2〜3心が同一シース内に収まっており、心線同士の発熱が逃げにくいためです。例えば2.0mmで比べるとIV単線35A、VVF 2c 23A。形態の違いが放熱性に直結し、許容電流に反映されます。詳細は[電線の許容電流ガイド](/articles/kyoyou-denryu-guide/)を参照してください。
CVが90℃許容なのはどういう意味?60℃のVVFと何が変わる?
CVの絶縁体(架橋ポリエチレン)は90℃まで連続使用してもビニル絶縁ほどの熱劣化が起きません。これにより、同じ導体断面積でもより大きな電流を流せます。例えば14sq 2心ならVVR約59A・CV約91A(気中暗渠布設・周囲温度40℃基準)。許容温度の差が、そのまま許容電流の差につながります。
VVRとCVの価格差はどれくらい?
同じ太さ・心数で比較するとCVはVVRの約1.3〜1.5倍が目安です。ただしCVの方が許容電流が大きいため、同等の通電容量で比較すると差は縮まります。長距離幹線ではCVの方が細い径で済み、トータルコストで逆転することもあります。
JIS C 3342とJIS C 3605の違いは?
JIS C 3342は『600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル』の規格でVVF・VVR・VVF-Gが対象、現行は2012年版。JIS C 3605は『600Vポリエチレンケーブル』の規格でCV・CVT・CE・CETが対象、現行は2022年版です。絶縁体の違い(PVC vs XLPE)が規格分けの根拠になっています。
屋外引込にVVFを使ったらダメ?
屋外露出でVVFを直接使うのは推奨されません。耐候性(紫外線劣化耐性)が劣り、シースが早期にひび割れます。屋外なら「VVR露出」「配管内VVF」「CV」のいずれかを選んでください。電力会社の引込線(架空部分)はDV線またはCVが一般的です。

まとめ:3種は「絶縁材」と「形」で選ぶ

最後に3行で全体像をまとめます。

  1. VVF:ビニル絶縁・平形・60℃。屋内分岐回路の定番で価格・施工性に優れる
  2. VVR:ビニル絶縁・丸形・60℃。屋外露出・引込で機械的強度に優れる
  3. CV / CVT:XLPE絶縁・丸形・90℃。幹線・動力・大容量で許容電流が大きい

判断のキーは「許容温度(60℃ or 90℃)」と「形(平形 or 丸形)」の2軸です。この2軸を押さえれば、現場で「どれを使うか」を迷いにくくなります。

許容電流の具体的な数値は電線の許容電流ガイド、剥ぎ取りの実務はVVFケーブルの剥ぎ方、ストリッパー選定はVVFストリッパー比較で深掘りできます。